歯医者に行くのに早めに仕度が済んだのでパソコンを眺めて時間を潰していた。
さてそろそろと思ったところで宅配便が届く。
時間に余裕はあるから大丈夫大丈夫と、それでものんびりしていたら払込があったことを思い出す。
用紙を財布に入れたりしているうちにPASMOにチャージが残っていたかと気になる。
小銭のところには12円。お札はから。小銭小銭と、別の財布からかき集めたりしているうちに結局いつもより3分、出発が遅れた。
さっきまでの落ち着きはなくなり小走りでバス停に向かう。
バス停に着くと私に合わせたかのように向こうからやってきた。
流れるように乗る。チャージはたっぷり残っていた。
いつもより一本早めのに乗れたようだ。普段なら帰宅時間の小学生が乗っていて座れないのに、車内には空席がいくつもある。
ついてた。
ホクホクしながら携帯のパズルをやる。
目が疲れるなあ。すぐにやめた。窓の外をぼんやり眺める。
ここ、うちの近所に似てる。こんなとこ通ったっけ。
・・・・・。
・・・・・!
近所に似てるんじゃなくて近所だ。路線を間違えた。等々力行きの止まるバス停には二子玉川、高津、田園調布と複数の系統のものが停車する。
違う違う違う違う。
ちょうどスーパー前のバス停で待っていた人を乗せるために止まっているところだった。
慌てて立ち上がり降りようとしたがドアは閉まっている。そうか、ボタン押してないから。
こういう時、声を出せばいいものを動揺していると何をどうしたらいいのかサッと思いつかない。
また、腰かける。
どうしよう、いっそのこと終点まで行って電車に乗ろうか。
それじゃ間に合わない。
くるくるくるくるカラカラカラカラ頭が回る。
次で降りるのは得策じゃない。次の次で降りて、公園を突っ切ろう。
かんかん照りの公園を小走りで通り抜ける。
朝、ラジオ体操で歩いた同じ道も時間帯が違うと風景が違って見えた。
そうだ、急げばいつものバスに間に合うかもしれない。公園の向こうにいつもの路線の停車するところがある。
やっぱりついてる。
希望が見えて足取りも軽くなる。急げ急げ。
公園を抜け、住宅街の脇道を抜け、あとちょっと。あそこだ。
バス通りが見えた。
っと、同時に赤い横線のいつものバスがスーッと横切って行った。
・・・ついてない。
よろよろバス停に辿り着く。時刻表を見るとあと5分待てば次のがくる。しかし歯医者の予約時刻まであと10分しかない。
そこにホーレほれ、乗らんかいとタクシーがやってきた。
いや、いくらなんでも。
見送るとまた一台。
むむむ。
右手を挙げた。
近寄ってきてドアが自動で横にスライドされたところに首を突っ込む。
「あの、カードでの支払い、できますか?」
「できますよぉ」
「等々力までお願いします」
1000円かかった。
2分の遅刻だった。
駅のホームで扉が開いていると行き先も見ずに乗ってしまう習性がある。
それで幼い息子を何度反対方向に連れて行ったことか。
しまいには幼稚園の息子が電車に乗る前にグッと私の手を引っ張り
「大丈夫、ちゃんと見た?うちの駅に止まる電車か見た?」
と言うようになった。
久しぶりにやってしもた。