あと2日で大切な友人の長かった会社員生活が終わる。
体調を崩し、メンタルも弱くなり頑張れなくなってしまった。負けず嫌いの彼女にしてみたら決断するまでは辛かったろう。
バリバリ仕事をこなし、出世していった。子供を持たない夫婦の二人は仕事の合間に長期休暇をとり海外に出かけリフレッシュをし、パリッとした服を着て、また最前線に戻る。
その生活を終わりにして、これからはもう少し呼吸の楽な生活に変えていこうということなのだと思う。
大学の頃から妹のような存在でもあり、同志でもあり、魂だけで繋がっているような不思議な関係の存在だ。
仕事の残務整理が山ほどあって、考えただけでも吐きそう。
年賀状にそう書いてあったのがずっと気になって、勝手に弱っていると思い込んでエールのつもりで春頃、チョコレートを送った。
仕事の合間に食べて元気を出して欲しいと独りよがりの行動だった。
「なんか心配かけちゃったね。もう落ち着いて今は楽に暮らしているよ」
空振りだった。つい実家の姉の気分で世話を焼いてしまった。
彼女が会社を辞める日だと思い込んでラインを送った。5月の末だった。
「あともう1ヶ月きっちり働きます。前にも言ったけど6月いっぱいで辞めます」
しまった。6月までというのを、6月からと勘違いしていた。よく考えれば上半期で区切りをつけるということなのだ。専業主婦のお気楽な生活ではピンときていなかった。
お手つき2度目。
そして六月。毎年、彼女に限らず数少ない友人5人にお中元とお歳暮を送っている。
これは自分が生死をさまよったとき、彼女たちの存在に深く感謝をしたことがきっかけで始めた。
いつ何があるかわからない。後悔しないように、大切な人には大切だと伝えよう。
今年も贈る時期が来た。
彼女に贈るかどうか一瞬躊躇する。いくらなんでもここ最近の流れでまた何か届くのは鬱陶しいのではないだろうか。
結局、自分が後悔したくなくて「それとこれは別」とワインを贈る。
6月の末に届くようにと手配したのに、それがもう届いてしまった。
「ワイン、受け取りました。いつもすみません。。。」
「お手つきばかりでストーカーのようで申し訳ない。暑い季節が始まるね。体調気をつけてね」
「いいえ。本当にお気遣いなく・・」
このやりとりがあっての今日。
あと二日。正真正銘あと二日。
彼女はどんな気持ちでいるだろう。
清々しさと、さびしさと、新生活への希望と、やり切った誇らしさ。
さすがにもうラインを送れない。
うざったい姉ちゃんは心の中でおとなしく祝い、讃えるつもりだ。