雨。この音は本降りだ。
散歩は休もう。
この「休む」を選ぶようになったぶんだけ、成長した。
昨年の冬は休むことでプツリといいリズムが壊れてしまいそうで、ダウンを着込み、傘を差し、足元をびしょびしょにして歩いた。
冬の早朝、雨と風を避けながら必死になって歩くあれは、決して運動が好きだからではなく、恐怖心からだった。
本当はいまも少しそのかけらがのこっている。
その証拠に実は昨日、いつもより余計に歩いた。歩数の貯金だ。
いつかこのちまちました帳尻合わせからも卒業したい。
気圧のせいか知らず知らず疲れがたまっていたのか、朝から頭が重く思考がまとまらない。朝食の支度も手順が悪く、自分がなにをしようとしていたのか、しているのかふわふわする。
何度か手を休め、「えーっと・・」と考える。
中途半端な量のご飯しか残っていなかったので、昨日の中華スープに放り込んで卵を落とし、夫は卵雑炊。それににんじんとピーマンのきんぴら、冷凍の唐揚げ二つ。
息子にはパンが残っているから。卵と冷凍のほうれん草とミックスベジタブルとベーコン、牛乳をまぜてチン。オムレツ風。
と、冷凍の唐揚げ3つ。
今日は生協さんがくる。ミックスベジタブルがまた届く。なのに冷凍庫にはまだつかいきれていないのがたくさんある。今晩、残ってるミックスベジタブル全部でピラフを炊いてスペースを作ろうか。
頭があちこちに飛ぶ。
洗濯機の脱水がおわったとピーピー言う。
そうだ、朝の薬、飲まなくちゃ。金曜日だけ飲む薬がある。忘れないように。
一人先に食べていた夫が「ごちそうさま」とお盆ごともってやってきた。
お湯沸かさないと。
電気ポットをとりあげ、水を入れ、電子レンジの扉を開けた。
「えっ」
小さな声で夫がささやく。
それはとても遠慮がちな、怯えたものだった。
はっと我にかえる。
電子レンジの庫内の高さにポットがぶつかって入らない。それをぐいっと押し込もうと傾けている右手。
「お、おお・・ちがったちがった」
「びっくりしたぁ」
ポットを電気の通った台座にセットしなおした。
「びっくりした、なにやってんのかと思った」
ホッとした笑顔でこちらを見る夫にむかって言う。
「たぶん、疲れてるのよ。私だってそれなりに」
「いいからいいから。そういうこともある、いいから」
慰められた。
この重っ苦しい気だるさとしんどさをわからせて、労ってもらおうとしたのだが。
伝わっていない。
むー。
全部全部気圧のせい。