憧れる

おおらかでありたいと思うのは本心なのに。

夫が私の机の上にポイっとお金の入ったポリ袋を置いていた。朝の散歩に出ている間にやってくるヤクルトさんに支払う代金を、いつもファスナー付きのビニール袋にいれて用意しておく。それを窓際の私の机の上に、便利だからと持ってきていていたのを今日、知った。

「え、やだ」

「え、なんで、いつもここに置いてた」

「なんで、やだよ」

「ちがうちがう、そこにあったのをちょっと置いただけ」

「そういうことじゃない、そこは私のプライベートゾーンなんだよ。じゃああなたが会社に行っている間にあなたの机の上にいろいろ置いてあげる」

「ひーん」

自分の机は触ってはいけないところだが、私の方は家族の場所だと思っている。ダイニングテーブルに新聞を置くのと同じ感覚なのだ。

ちがう。

感性のちがいなのか、私が神経質なのか。

届いた郵便物をじっくり裏返して見られるのもなぜだろう、いやなのだ。ハガキは基本、他人が読む前提で送られてくる。当然夫は文面を読む。それも嫌だ。

冷蔵庫に貼ってあるメモや電気代、ガス代、水道代の明細をじっくり見られるのも嫌だったが、これは電気水道の無駄遣いをしていないかとチェックされているように思う私がおかしいのかもと改めた。オープンにしてみんなの節水節電に意識がつながればいい。

無印の折りたたみの机。自分で自分のために買ってきた。脚を切ったり、向きを変えたり居心地のいいようにあれこれいじって使っている。パソコン、読みかけの本、メモ帳、私の今が集まった小さな基地なのだ。

そこに近づくと私は毛を逆立ててフーッと威嚇する。

「はいってくんな」

この気性の荒さを自覚するから、あこがれる。

おおらかなのんびりした人に、私は、なりたい。