母の日に何もなかったからと息子がお菓子を買ってきてくれた。
私がスーパーでよく買ってくるポン菓子で単価30円。それを5個、スーパーのレジ袋に入れたまま差し出した。
「店中のを買い占めてやったぞ」
150円のサプライズが素直に嬉しい。不憫と思ったのか、後ろめたさか知らないが、わざわざ帰りに地下の売り場に潜って寄り道してきてくれた。その手間に喜んだ。
「傘だと思ってた」
自分で晴雨兼用の軽量の折り畳み傘を注文するから、それを母の日のプレゼントにしてもらっていいかと聞いたら「いいですよ」というので選んでいるところだった。
「それはそれで」
2000円くらいで選んでいいかと言ってインターネットで物色していたが、いざ見ていると本当に欲しいと思うものは4800円した。
妥協すれば1200円から色々ある。しかし超軽量という条件は譲れない。その縛りで探すとどうしても4800円に行き着く。
ここは旦那を巻き込もう。たまたまそこに降りてきた夫に息子に傘を買ってもらうことになっていたけど予算を過ぎるから、半分はあなたが出してよと言った。
「二人で買ってよ」
「いいよ」
超軽量の折りたたみ晴雨兼用の傘。薄いパステルパープルにベージュの縁取り。ポチ。
なぜか言い出しづらい。それでもそのうち届いてしまう。
全員が揃った夕食時、息子に説明した。
「傘、あれね、2000円じゃ欲しいのがなくて、結局5000円になっちゃったからさ、父さんにも話したから二人で半分づつ出してよ」
それでも2500円になってしまうが、そこは大目に見てくれるかと甘えた。
「何言ってんの。5000円出します。親父はいいから。親父にはまた別に出してもらえ」
「嘘、いいの?」
「みくびるな。親父からももらえ。もっともらえ。5万円くらいもらえ。あいつは自分にしか金をかけないんだから」
その親父は目の前で苦笑している。
「いいか、2500円で助かったと思うなよ、勉強もしないで無駄にTOEIC受けやがって。勉強もしない教材ばかり買いやがって」
ヒーン、してるもーん、車の中でちゃんとCD聴いてるもーん。
突然矛先が自分に向いた夫はいつものヒーンを連発し、さらに息子に詰め寄られていた。
今年の梅雨と夏はこの折畳み傘をどこにでも持って歩こう。
ちょっとだけほくほくしながら傘を広げる。