母の日私の場合

前夜

「明日、母の日だからご飯作りたくない。二人でなんでもいいからとってよ。私のご飯は自分で用意するから」

と言った。

「またピザ取るか」

夫が嬉しそう。ネット注文の仕方をマスターしたばかりなので得意なのだ。

「またピザあ?太るからなあ、ピザじゃないのがいい」

息子は眉間に皺を寄せた。ジムで体脂肪が増えたと言われたらしい。

「なんで、ピザ食べようよ、父さんピザがいい」

「ピザはちょっとなあ・・・」

しばし沈黙。夫は明日は早朝から出かける。今決めてくれないと、困る。このあやふやなまま明日を迎えると結局どうするんだと私が落ち着かない。

ああもう、めんどくさい。

「カレーでいいなら、作ろうか」

「いいの?でもそれじゃあ母さん休んだことにならない」

言ってることと表情が一致していない。あきらめよう。

「カレーでいいならべつにいいよ、簡単だし。」

ここで我を通して食卓で二人が険悪なのよりずっといい。

朝の散歩から帰ってきてすぐにとりかかる。きょうは一日ぐうたらデーにするんだ。さっさと作ってしまおう。

けれど思っていたより海外ドラマも録画していた番組も観られないもので、2本連続でもう疲れてしまった。低気圧のせいもあり頭痛で目を閉じ、ラジオを聴いて過ごす。

暇だ。

不毛だ。

ムクリとたちあがり、買いすぎてしまった玉ねぎをリングフライにし、カレーで中途半端に残った鶏肉を唐揚げにする。

変なエンジンがかかってナスも素揚げにした。

ステンレスの網の上に山のようにできてしまった。

そこに息子が帰ってきた。

「おお。母の日だって言うのに。こんなごちそう」

「まったくだ」

そこに夫も帰ってきた。ただいまと言ったきり2階に上がって降りてこない。

「父さんにもご飯だって言って」

揚げたてのフライと、カレーライス。

どちらもふたりの好物で機嫌がいい。

「いただきまーす」

声が揃った。

「ちょっとまてぇ。おかあさん、いつもありがとう!」

ふたりを軽く睨みつける。

にやにやしながらそれぞれ「どうもありがとう」「いつもありがとう」とこっちを見た。

「よし」

「いただきまーす」

むりやり言わせた。へっぽこ母の日。