夫が一日家にいて、私はどうかといえば、別段嬉しいわけでもない。
一日中リビングでテレビを見ながら新聞を読んでいる夫の横でイヤフォンをしながら本を読んだり動画を観たりしていた。
バッサバッサと新聞を捲る音がいちいちうるさい。
トイレに出たり入ったりする扉の開け閉めも、戸棚から柿の種を取り出して二袋をがっつくように食べる音も。
いるだけでうるさい。
やはり私は体調が良くないようで頭の芯に鉄の棒が入っているかのように重いのだ。
静かに過ごしたいのだ。
テレビの前に突っ立って眺める夫に息子が「じっとしろ、騒々しいぞ」と言った。
「え、あ、ごめん」
椅子に腰掛けるがまたすぐウロウロし始める。
「いつも家にいないから、家の中での過ごし方がわかんなくなっちゃってるのよ」
「そうか、そうだな、居場所がもうないんだな」
「ヒーン」
うるさいなあと思いながら私は2階に移動しない。ベッドに転がって本を読んだっていいのに。
息子だって別に用があって降りてきたわけでもなかった。
なんとなく、みんなが一階にいた。
暇なら掃除機かけろと夫にからむ。
ヒーンと生返事でテレビを見続ける。
家にいても何もしねえじゃねえかと息子が絡む。
トンさんと一緒に散歩してきたと夫が得意になる。
しばらくしてそれぞれがまた自分の世界に戻っていった。
夕方、2階に向かって「ご飯ですよ」と叫ぶと「はーい」「ほーい」と二つ返事があった。
あ、この感じ、久しぶり。いいな。
そのとき、思った。