いちご

いちごが298円になっていた。

普段は安くて398円、大抵450円前後だがやっと露地栽培のものが出回ってきたのか。

迷うわず買う。

小粒の甘酸っぱいのが、私の中で本当のいちご。

クリスマス、正月、バレンタイン、お雛様、卒業、入学、晴れの日を飾るデザートとしてちょっと気取った、柔らかくふっくら甘いのももちろん好きだが、きゅっと締まったゴツゴツしたこっちの方が懐かしい。

夕食のあと、スプーンで潰して砂糖と牛乳をかけたのはこっち。

鍋に入れていちご水やジャムを作ったのもこっち。

冬の間にも買って食卓に出した。ビタミン豊富だからと外に出てゆく夫と息子に多めに、自分はその残りでよかった。

コロナに感染しないよう、免疫力をつけるよう、ビタミン剤を買うことを思えば安いもんだと500円を超えたものでも「えいやっ」とカゴに入れて食べさせる。

それが。

298円のいちごを今朝、夫の皿に乗せるか一瞬迷う。

小皿にちっちゃい小粒のをひとつ、ふたつ、みっつ・・・よっつ?・・まあ、もうひとつくらいあげましょうか。

これは私のいちごだ。

もったいなくてあげたくない。

よくよく考えたら、ミニトマトより安い。これだけびっしり入ってこの値段、ミニトマトだったらもっとする。

大きなふっくらしたいちごを、バンバン振る舞っていたのは愛情深いからではないようだ。

ちっちゃいいちご、クローバー畑。子供の頃の春の香り。