芝刈り第二弾、母の方も昨日終了した。
イヤフォンで録音していたラジオ番組を聴きながら、まずは目につく草を引っこ抜く。
雑草でも花がついているとつい、気の毒になって残そうとする。やりながら花がついていないだけで乱暴に扱われる不平等さに申し訳なく思う。
思うが、抜く。
草原のように靡いているのが風情があっていいと、息子は言う。
それもそうねと、放置してみたが広い庭ならそれもいいが、そうでない我が家ではターシャのようにはならない。
ただただ、手入れをしていないだけの荒れ放題で、散らかった部屋で暮らすようなダメージがじわじわとくるのだ。
この矛盾。
矛盾だらけだ。
矛盾も有りとしながら生きていく。
勉強ができない、体が弱い、気が利かない、やぼったい、役に立たない。
それでも人間は生きていく。
人間にも薔薇として生まれてくる種の人はいるように思う。
トルコ桔梗や菖蒲のようにうっとりされる容姿の種として存在する人もいるように思う。
抜いても抜いても生えてくるなんだか知らないけど、うちの庭のあちこちでよく見る草。
花もつけない。
芝生の間に根を浅く広く伸ばし、引っこ抜いたつもりでも放っておくとまた生えている。
私はこいつかな。
そんなことをぼんやり思いながら、ヒョイっと葉っぱを掴んで引っ張った。
ぶち。
上の方はちょん切れて、根っこは地面に残った。
生き延びてくれると思うとちょっと安心する。
頑張ったご褒美。母の庭にたくさん咲いていたのをもらう。
やれやれと家に入ると夫が降りてきて窓の外を眺める。
「トンさーん、頑張ったねぇ」
「おめえが週末いつもいねェからだろっ。なんでうちの中で一番体重がなくて非力な私がやるんだっ」
「ごめーん、ごめんねぇ。無理しないでね。ゆっくり休んで」
そう言ってマグカップに氷水を入れて持ってきてくれた。
「あ、あとぼくね、これから1時から会議だから。お昼ご飯、2時ごろに、お願いします」
「知らんがなっ」
「あ、そうだよね、そうだよね、いいよいいよ、ぼく、なんとかするから。あ、でもおにぎりがいいなあ。おにぎりなら」
バラでもトルコ桔梗でもないただの草でも必要としてくれる、ありがたい貴重な人なのである。
おにぎり三つ、海苔を巻いて持っていく。
「ほいよ」
「あ、ありがとぉ。力でる、頑張るからね」
私が根を張って生息しているのはここなのだ。