コーヒーショップに行ってちょっと気分転換したかった。
ここでホッと一息、いつも40分くらい過ごす。家でもぼんやりしているのだが、家の外でもぼんやりしたい。
すきあらばぼんやりしたい。
本を持って、コーヒーのMを店内でと頼む。
見たことのない顔の女の子が若葉マークをバッチにつけている。
注文を受ける人、コーヒーを淹れる人は別々で、私の注文を受けてレジをしてくれた人がその子に「店内ブレンドMお願いしまぁす」と申し送ると「かしこまりましたぁ」とマシンにカップを近づける。
あっという間にくるっとこちらを振り向き、きっと睨んで、ガチャっと置いた。
少ない。明らかにいつもより少ない。
でも言えないものである。
そのまま受け取って席に着く。移動で揺れたのがおさまって改めて見るとやっぱり少ない。
カップの内側に窪んだ浅い溝のように丸く印がある。おそらくこれがMサイズの時の線なのだ。その下にもうひとつある線はカフェラテなどの時にここまで入れたら、次の線までがスチームミルクとか、そういうののためにあるのだろう。
線より下だ。3ミリ、いや、5・・まではいかないが4か、3か。やっぱり少ない。
自分でも意外なのだが、この数ミリになんでだろう。気になる。
本来うけとるべきサービス、商品に欠陥があったからなのか。
買ったばかりの本の中に折れているページがあったわけでもあるまいし。この数ミリがどれほどの量だというのだ。
なんだろうこの気持ち。
ガチャンっ。
きっと自分が客として大切に扱ってもらえなかった証のように感じたのだろう。
あのコップを置かれた時、オットと思ったけれど「まあまあ」と瞬時に打ち消したつもりだったがなあ。
若葉マークの女の子。その硬い表情もお客を待たせちゃいけないと肩に力が入っているのも、コーヒーを注ぐ量が慣れていないのも我が娘だと思うと愛おしい。
うちの息子もどこかで小さく誰かの心をざわつかせているはずだ。
私もそうだった。
くるくる回って、順繰りに育っていく。
今の私だって、きっとどこかで何かしら、やっている。
みんなみんなおんなじおんなじ。