台湾旅行から帰った姉が微熱を出した。
喉が痛く、咳が止まらない。
・・・やったか。
母は、休暇をとって海外旅行に行き、休み明けにお土産を配り、すでに二日間出社している姉の社内での体裁を心配する。
「コロナに感染してるのに出てきたってことになる」
ううむ。なるねえ。
梅干しと常備してあるお粥のレトルトを三つ渡した。
外出するから何か買ってこようかと聞くと
「私もこれからお医者さんだから、帰りにスーパーに寄ってくるからいいわ」
という。母親は80になっても母親なのだ。シャキンとしている。
結果、違った。
「こんなに元気なコロナ患者はいません。」
希望するなら検査してもいいけれど絶対違うと笑われたそうだ。
とたん元気になった姉と母。
大きな丸を頭の上に腕で作り、やってきた。
「お姉さんがお粥なんか食べたくないって。お刺身が食べたいっていうから。今から買いに行くわ」
夕方5時半過ぎだった。
「コロナで入院したと思えばお寿司とったらいいじゃない。お祝いに。邪気払いになるよ」
熱を出した中年の娘がお刺身を食べたいといえば飛び出して行こうとする後期高齢者。
親って・・・。
母親って・・・。
私の中にもある、この炎。
母は死ぬまで母なのだ。祖母も死ぬ瞬間まで母だった。
母親って母親なんだなあ。