乱気流

なんか苛立っている。

体調が悪ほどでもないけどしんどい。眠りが浅い。気力が湧かない。

自分の中の何かが攻撃的な気がして持て余す。

ドトールのカウンターで髪の長い女の子が注文したサンドウィッチが出来上がるのを待ちながら、もたれかかって独り言を言っていた。

すらっと伸びた細い足にゴツい厚底のブーツを履いた若い女の子。何かなやみごとでもあるのか。

口元を抑え、クネクネ体をさせて薄笑いしながら頷いたりしているのを見て、あ、もしやと気がつく。

イヤフォンで通話をしているのだ。独り言に見えたのはそうではなく、誰か相手がいるのだ。

そうなったとたん、私のなかのどす黒い中年女がムクムクと立ち上がる。

キンキン響く声のトーンも、髪を指に絡ませる仕草も、偉そうにカウンターに寄りかかり店員に目配せしてここに置けと指図する様子も全てが勘に触る。

意地悪い自分が大きくなっていくのを恐れ、目を逸らす。

癒しを求めてここにきたのだ。感情を乱されたくない。

コーヒーを受け取り席についた。

いつも座るところのすぐ横に黒い鞄が置いてある。

ひとつ開けた隣に荷物を置いた。

座ろうとした時に、注文の列の中に見覚えのある男がいた。

あ・・・。あの人のか。この黒鞄。あの人、体臭がすごいんだよな。お風呂に入っていないような臭いがいつもする。

立ちあがり一番離れた席に移動した。あからさまにすぐ離れる露骨さ。嫌な私だ。

移動した先に落ち着いた。

そこに今度は背広姿の中年男性が席を取るために、先に荷物だけ置きにやってきた。

目の前でテーブルにポンっと新聞を放り投げ、注文をしに立ち去った。

ムッとする。

戻ってくると新聞をばさばさ広げ、髪をかきむしりながら、何度も何度も咳払いをする。

動く新聞が目障りで、数秒ごとの咳払いも耳障りで、イーッとなる。

もう移動できない。

あっちは臭う。こっちはクネクネ、目の前はバサバサ、エヘンエヘン。

 

ああ。イラついている。

彼ら三人よりもピリピリしている自分が一番嫌だ。

こんな日は。じっとしていよう。

じっと私のなかの嵐が過ぎ去るのを待つしかない。

昼寝だ昼寝。