ケキョ

早朝、子供の鶯が「ケキョッ」と鳴く。

目覚めてすぐ、得意になって発声練習をしているのか。ただ、ただ、嬉しくてたまらないという響き。

悲しみなんてかけらも感じない。この世が物珍しくてたまらない。

ねえねえ、あれなあに、ふわふわしたのがたくさんついたよ。

桜よ。

この前は小さかったのに。いっぺんに大きなピンクに広がった。

そうね。

雀さんも鳴いてる。起きたみたい。

そうね。

それから数時間後、親の鶯が綺麗な「ホーホケキョ」を響かせる。

朝5時の子供と一緒に鳴いて、お手本をしてやったりしない。親はまだ寝ていたいのか。

一人遊びをさせながらうつらうつらしていたいのかもしれない。

優しい優しい春の朝。

雨があがった。

ケキョッ。ケキョッ。

調子っぱずれで力一杯の声が喜びに満ちている。