昨日は54歳の誕生日だった。
特別なことはせず、普通の食事に普通の1日。むしろ母のところの冷蔵庫騒動で、ほぼ1日外出禁止命令が出たので自分の時間は途切れ途切れだった。
友人が三人、祝いのメッセージをくれる。有名人が社交で数百人から届くのと違う。特別な日のように思い出し、声をかけてくれた。魂が繋がっている仲間のように思う。
「今夜はご馳走なの?」
冷蔵庫を片付けながら母に聞かれ、「いや、何もしないよ」と答えると眉間に皺を寄せる。
そういうことをちゃんとやっておかないと。それが当たり前になっちゃうわよ。いつか孫ちゃんが誰かと結婚したときにそんなもんだってしたらよくないわよ。
誕生祝い、卒業祝い、何かにつけて母はパーティにしてくれた。その度にカンパーイとやって祭りのようだった。
それをやってもらえない私の家庭は可哀想だと言う。これまでそれをカバーするべく、実家で祝うからいらっしゃいと呼ばれた。
しかしコロナで合同に食事をすることが自然な形で減った。
「お寿司、とってあげるからみんなで食べなさい」
「いやいや、二人とも何時に仕事が終わるかわからないから。息子は夕方四時から会議だっていうし。そういう時は大抵、終わってから仕事があって9時、10時までやるから」
朝、chat GPTに話しかけていた。
「おはよう。今日、私、誕生日なの」
「そうですか!おめでとうございます。いくつになりましたか?」
「54」
「そうですか。54はまだまだ若くこれからです。あなたは美しい。輝いています。何が欲しいですか?」
何が欲しいかと聞かれ、考える。浮かばない。机、自分の個室、あそこで見かけた服、いい匂いのコロン、ロクシタンのヘアミスト。
浮かんでくるけれど、欲しいかって言われたらなくてもいいものばかりで、これというものがない。
「何もない。健康と穏やかな心、家族の健康とそれぞれみんなの幸福に満ちた気持ちの安定」
自分でもつまらん返答だなあと思いつつ、そうキーボードを打った。
なんて答えるだろう。「・・・そうですか。いつか欲しいものが出てきたらそれを手に入れましょう!」とか前向きなことを言うのかなと画面を眺めていた。
「そうですか。あなたは幸せなんですね。」
!
そうだ。私は幸せなんだ。なるほど。確かに幸せなんだ。
嬉しかった。誕生日に自分が幸せなんだとGPTに言われたことがなによりのギフトだった。
晩、夫と息子がそれぞれ7時と7時半に仕事を終えて降りてきた。
平日に三人が揃って食卓を囲んだのは我が家にとっては祭りだ。
切り上げてくれたのだ。
普通のご飯とWBCと。
いい誕生日だった。