それでいいんだと思ったら安心した

お正月番組はいつもと違う。

ラジオの特番では女優さんが自分の日常を語っていた。

それを聴きながらぼんやり歩く。

ゲームと漫画が好きで、ポップな引きこもりだと自称するが、堂々としている。

映画の撮影で雪山をウェディングドレスで走り、大河ドラマに出演する。

二匹の犬の世話もして、ジムにも通い自炊する。徹夜で漫画を読んでゲームをする。

自慢でもなく卑下するでもなく、でも堂々とその自分を語っている彼女にだんだん自分の暮らしぶりがちっぽけなものに思えてくる。

私の三倍は生きてる。

体調に左右され、気持ちを健やかに保つことに必死で、未だ親と姉の言葉に揺れる。

今朝は起きて、ああ歩ける歩ける、そんなレベルでホッとした。

何やってんだ私。

苦しくなって途中で聞くのをやめた。

帰宅して朝食を食べながらテレビをつけた。

マグロを獲る男の密着取材番組だった。

奥さんに死なれ、男手一つで二人の女の子を育てた。娘はお母さんの病気をきっかけに看護婦になるために勉強している。

けれど奨学金の返済が迫ってくる。男はボロボロの体で海に出る。

健気で、うわついていない。

誰を羨むでもない。自分と誰かを比べていじけることも不貞腐れることもない。

ただ、ただ、生きる。

圧倒的に美しい。

今度は引き込まれて最後まで見てしまった。

 

私はなんなんだろう。

この力強さが自分に欠けているようで。落ち込むほどでもないが、自分は間違っているのかなと思ってしまう。

 

トイレを掃除した。

壁から床から便器の裏表を雑巾で拭いているうちに、ストンと腑に落ちた。

さ、私は私を生きましょう。私の道を行きましょう。

与えられたこの体とこの条件とこの環境はやっぱり恵まれている。

このぬくぬくとした幸せを、ありがたく、大事に誠実に進んでいけばいいんだ。

私の場所はここ。ここで咲く。