あなた2年連続、暮れになると何かやらかしてるんですからね、お願いしますよ。今年は。
へいへい。
一昨年は心不全で浮腫み、昨年は庭の階段ですっ転んで骨折。
「去年はお姉さんに松飾り、手伝ってもらったんだから。」
すんません、かたじけない。仕事で疲れている姉に正月の準備をさせたのがよほど気の毒だったようで、念を押された。
「今年は、大丈夫なんでしょうね」
「へい」
「じゃ、全部任せたと思っていいんでしょうね」
圧が。無意識の圧が。
「だいじょぶだいじょぶ」。
ただつければいいのではないのだ。
左右、バランスよく、麻紐を使って独特の結びつけ方がある。そうするのがいちばん見栄えがいいそうだ。位置は門の板の下から何段目、それが最も美しい。母のこだわりを継承せねばならぬ。
「なんでもいいのよ、取り付けてくれれば」これを信じてはならぬ。
「あれ、随分バランスおかしいわね。右と左の高さがおかしいわよ、これじゃあんまりだわ」
小学一年生の一学期、ABCの三段階でCを図画工作で貰ってきた。その娘にやらせてるんだから仕方ない。しかし趣味はパステル画、若い頃はアートフラワーの師範まで取得した彼女の美的センスは耐えられない。
ブランク前のこの数年は、夫に手伝ってもらっていた。
「どうっ?どう?右と左。高さ、揃ってる?」
ところがこの男、美的センスゼロにおいては私の数段上をいく。彼の小学時代の粘土細工を義父から渡されたが、なにを作ったのかまったくわからない。ただ迫力だけは感じられ、しばらく魔除けとして玄関に飾った。
この二人が門を飾る正月。
「まあこんなもんよね、あなたたちじゃあ」
口の悪い母と姉は鼻で笑う。これぞ次世代の証と開き直る。
今年はその夫も出社して不在だ。センスゼロだとしても当てにしていたというのに。28日に飾ってしまいたいと思っていたのだが30まで仕事だそうだ。31だと一夜飾り。
息子は28から休暇だ。
部屋でまったりしてるところを引っ張り出して、文句言われながらやるの、やだなあ。
一人でちゃっちゃとやってしまいたい。己の不器用さを呪う。
松飾り一つに今から緊張するこの性格、なんとかしたい。
思い詰めるな、私。最悪、元気印の婆さんに「松飾りひとつ満足にできないんだから」とぶうぶう言われながら一緒にやってもらえばよい。
仏頂面か、ぶうぶう文句か。
せめてお天気であったかいといいなあ。