祖母とのサツマイモの話を書いたらその日、サツマイモがやってきた。
正確にいうと、母のところに。
植木屋さんが持ってきたのだ。先日、庭の柿が残っているのを見て、もらっていいかと全部持って行った。そのお返しかもしれない。
ふらっと来てビニール袋にいっぱい、渡して帰っていったそうだ。
「あげる」
受け取ったそのまま、門から直行してきて庭先で私に突き出す。
「なんで。半分こでいいよ」
「お芋、いらないもん。好きじゃない」
ぺろっと舌を出し、ほらっともう一度こちらに押し出す。
「じゃあ焼き芋にして持っていってあげようか。焼き芋なら好きでしょう」
祖母好みでない、立派な安納芋。蜜が溢れている。スーパーで時々買ってくる母は焼き芋という単語に反応した。
「そうね。じゃあ、持ってきて」
「何本?1本、2本?」
「ひとつでいいわよ、充分よ」
オーブンで焼くとねっとりとしたのが出来上がった。
割って見るともう、それだけでスウィートポテトのようだ。
紙に包んで持っていく。
「ほい」
「もうできたの?ちょうどいい、これお昼ご飯にするわ」
動物はふわふわしたのが好き。パンはふかふか甘く、柔らかいのが好き。映画はロマンチックが好きで、芸能人はハンサムが好き。
穴の開いたジーパンや革ジャンを品がないと思い、赤い髪の人を不思議がる。細いお芋なんて美味しくないわ。全粒粉のパンなんて何が美味しいの。
ある意味、好奇心がなく、ある意味、好奇心の塊。
みんなそれぞれ。
それぞれが集まって暮らす。
息子がバターをつけて丸ごと一本、平らげた。
「これ、すげえうめえ」
この人は玄米も雑穀もクロワッサンも、好き。細いお芋は揚げると食べる。