これもある意味、利他

雨なのでラジオ体操を家でする。

早朝、シャッターを開ける前の部屋の中、携帯のラジオアプリからいつもの音楽と声を聞きながら始めたが、同じはずなのになんだかしらける。一人だからかもしれない。

職場の朝礼の後などに全員でやっているところもある。

私の勤めていたところでは、ひと月に一回、昼休みにテープだけ流れた。一応流しておくから。福利厚生として。という感じなのでほとんどの社員はやらない。ところが副部長が「ほら、やるぞ」と自ら立ち上がる。部長は笑って見ている。すぐ上の先輩たちは昼休みでも終わらない仕事に必死でそれどころではなく見向きもしない。私の他に二人、女性がいたが、どちらもスッと席をたつ。副部長は満面の笑みで私を見る。

広い部屋で私と副部長だけが飛んだり跳ねたりするのだった。

あの10分も周囲の冷ややかな視線の中、楽しくもなんともなかったが、一人、暗い部屋の中っていうのはもっとつまらないのだ。

閉まっている窓が鏡がわりになって自分が映る。

びっくりした。

ただ、深呼吸の動きをしているだけなのに、なんか、おかしい。おかしいというより、変。というか滑稽。

以前にも書いたが、私は肘から先が微妙に曲がっている。そのせいだろうか。まっすぐ腕を上に上げ、横に下ろしてくるだけの動作なのに、なんの難しさもない、むしろ自分ではここは大丈夫と思っていた最初のところから、妙な動きをしていた。

筋力のなさなのかと腕にも肩周りにも、腹筋にも意識して力を入れて形を意識しながらやってみる。

余計、ヘンテコリンになった。

ぴょんぴょん跳ねたり、上半身をぐるぐる回したりするところは上手にできていない自覚があった。

きっと自分で思っているより飛べていない。回っていない。

しかし、まさか初っ端からとは。こんな奇妙な姿を私は毎朝、あそこで晒していたのか。

衝撃と驚きとおかしみ。

誰もいない部屋で窓に映る自分の姿が大真面目でよけい笑えてくる。

これは。ひょっとするとこの面白体操をどこかでお楽しみにしているマニアがいるかもしれない。

辛いこと、しんどいことを抱えている日々。その誰かの朝のひと時、思わずふふっと笑ってしまう奇妙な体操をする女。それが私。

何があってもあれを見たら笑っちゃうんだよねえ。それが私。

あんな人でもきっと楽しく生きてんだろうなあ。それが私。

どこかでお役に立っていることを祈る。