二人の世界

昨日、午前、映画を観てきた。

息子が推薦する今話題のアニメーション作品とギリギリまで悩んだが、真摯に現実の問題に向き合い感動するものより今の私には馬鹿馬鹿しい笑いだと、海外の実写を選んだ。

思いついたのが10時10分。急げば間に合う。朝の食器もそのままに家を出て10時50分には渋谷の映画館で座っていた。

飲んでいる薬の副作用でトイレが近いので一番後ろの端っこを予約した。席を選ぶ段階では三人掛けの横二つは空席でしめしめ気楽でいいわと思っていたら、行ってみるとそこには若い男女が仲良くっついてポップコーンを食べていた。

チェ。

しかしチェーッと思っているのはあちらの方だろう。

なぜか申し訳ないと、深く頭を下げ、席に着いた。

伸び伸び観られるとおもったのになあ。あっちもあっちで二人きりだと思っていたら余計なのがやってきたと思っているのかもしれない。

気詰まりだ。

いや、違う。違う違う。大学生の時、大好きだった男の子とよく映画を観に行った。二人並んで座って予告編まで、画面を観ながら小さな声でボソボソおしゃべりするのが楽しかった。

あのとき、横に誰が座っていようと気にもしなかった。迷惑にならないよう、コソコソ喋ってクスクス笑う。そして本編が始まると始まるねと二人、前を向く。映画が終わるまで右隣りの彼を意識しながら画面を観続けるのだった。

そこに隣のおばちゃんは居なかった。

そう思うとまた別の意味で気楽になる。

どうせ二人の世界に私は見えとらん。

着ていた上着を脱いでくるくるっと丸め肘掛けの横に埋める。それをクッションがわりに寄りかかり、スニーカーを脱いで足を組む。

どっかり腰掛けやたらくつろぎ、堪能した。