なんでこんな当たり前のこと、わからなかったんだろう。
理屈ではわかっていた。
でもなかなかそれが本心にならなく、人と自分を見比べた。
急に腑に落ちた気がした。あ、そうか、そうだ、そうなんだ。
それは突然。
木を眺めながら歩いていた。
いつもと違う道にはいろいろな姿形のがいた。
細長く伸びた木
太く枝葉が届くところにあって、腰掛けたり登ったりしても許してくれそうな木
苔がびっしりで樹液が割れ目から溢れている木
どれも魅力的。どれもユニーク。
椎の木だけとってみても枝の広げ方はみんな違う。それぞれ伸び伸び好き勝手に伸ばしてる。
木の下で人影が動いた。
ラジオ体操でいつも見かけるお婆さん。
ビニール袋に何か拾って入れていた。袋は既に半分ほど、詰まっている。
どんぐりかな。
目があって、会釈した。
あちらも応えてくれた。
もしゃもしゃパーマで茶色のズボン。えんじ色の上着。小さなふっくらした身体を屈めて地面を探っている。
かわいい。
大きな木、小さな木、太く高い、低く太い、細長く。
おばあさん、颯爽とジョギングする若者、犬を散歩させている若い女性、中年女性、中年男性、二人並んで歩くご夫婦、高齢、若夫婦、自転車で突っ切る女子高生。落ち葉。どんぐり。大型犬、小型犬。蜘蛛、蛾、カナブン、蜻蛉。
みんな美しい。
太陽の下、地球の上、ただ生きている。
ただ生きているだけのものが、それだけで美しいってこと、そう感じた今朝の感覚、覚えておこう。
金木犀のいい香りがした。