背伸びをしない

最近やっと自分がどんなものに心安らぐのかわかってきた。

やっと探り当てた、というより、どうやらこの辺に埋まってるなと、勘が働くようになってきた感じ。

 

攻撃性のないもの、ハラハラしないもの、スピードのゆっくりしたもの、チャーミングな人、作品。

なにもしない時間。

意外な発見だったが、最近一人の夕食時などにピアニストの動画を眺めている。

音楽に詳しくないので流行りの楽曲やアーティストはわからない。と言うよりはついていけていないのだ。たまに息子に教えてもらって聴いてみると、いいなあと思うものもあるが、それをキャッチするだけのアンテナが、ない。

ショパンだのジャズだのディズニーだの、耳馴染みのある有名どころのものを、ゆったり情感込めて演奏する姿をうっとり眺めている。

ロマンチックで夢のあるもの。を、求める傾向がある。

ロマンチック。一番照れ恥ずかしいと思っていたものに惹かれている。

わかりやすい芸術を好むのを母や姉によく馬鹿にされ、突っ張った時期もあったがそれはカッコつけで、やっぱり根っこの部分は変わらない。

絵といえば印象派。ハードボイルドな本やライブより、気楽なエッセイとドトール

 

若さを激しさというのなら私は昔からずっとそっちに馴染めなかった。

大学生のとき、男の先輩に若年寄りと渾名を付けられた。

当時はなにをもってそう呼ぶのか、いまひとつ理解できなかったが彼は見抜いていたのかもしれない。

周囲に追いつきそれらしく振る舞い馴染もうと、いつもどこか焦っていた。

なにかしなくちゃ。

なにすればいいの?

今、ぐるりまわってもどってきた。

で、うっすらわかってきたのは。

なんと、まさかの、なんにもしないでボーっとしてるのが好きな人間なのだった。

まったり

のんびり

平和で優しく

面白くお茶目で

スパイス効いた人を傷つけないジョーク

ほわーっとした

そんな世界

 

私の好きな世界は地味で小さく、浅い。

恥ずかしいくらい、小さく狭い。けれど、その浅瀬でチャブチャブしている日常が好きだ。

周囲と自分を比べることをやめたらいろいろ見えてきた。

世界の捉え方も価値観の軸も。だいぶ変わったのではないだろうか。

 

一番大事なのは、生きて、ここにいるということ。

そして、呑気であること。