飛べた

ラジオ体操のフォーメーションが変わった。

どうやら私が参加したのは夏休みバージョンだったようで、子供達がいなくなった今、もとにもどったのだろう。

それまで丸い輪っかになっていたのがぐるっと外向きになった。

はじめ、いつも背中をみていた先輩達がこっちを急に向いて並んでいるのでどうしたのかと焦った。

よお、新人、いつまで経っても挨拶ないじゃないの。

まさかそんなこと言うような人たちでもなさそうだし。彼女達はいつものように横一列に並んで時間になるのをお喋りしながら待っている。

あちらはこちらを気にしてはいないが、向き合ってやるのも気恥ずかしく、私も場所を移動した。

今度は大きな木の後ろ。やっぱりあのふっくらした可愛らしいおばあちゃんの姿が見えるところ。姿形、仕草が亡くなった母方の祖母によく似ている。

あっけらかんとした様子も。

 

そうそう。

今日は飛べた。飛んだのだ。

ラジオ体操の中にジャンプするところがある。そこがいつもできない。

筋力がないから膝を曲げるだけでやり過ごしていた。

今朝、なんとなく、できるような気がしてやってみたら。

飛べた!それも連続四回!

一回だけならこれまでもできることはあったが、続けてはどうしてもダメだった。

子供の時のようにぴょんぴょん飛び跳ねるなんてもう私にはあり得ないんだなあ。

そう諦めていた。

ラジオ体操に顔を出し始めて二ヶ月弱。

こんな貧弱な筋肉でもそれなりに進化していたようだ。

本人は飛んだ飛んだと思っていても、きっと側から見れば3センチ程度だろう。

もしかしたら飛んでいるようには見えていないかもしれない。

その程度のジャンプだ。

でも。嬉しい。

帰って夫に話したが、「ふーん」だけだった。

おヌシ、この事件性がまったくわかっとらんな。