朝、目が覚めて真っ先に思う。
そうだ。和解したんだ。母との間に一応の決着がついたんだ。
安心する。
わだかまりを抱えたまま、どう対応するか気にするのが一番しんどい。
一山、超えたんだった。
息子の熱は下がった。何度測っても6度台なのでこれは逃れたかと期待してかかりつけ医に連絡すると、時間指定で来院するよう指示を受けた。
「発熱外来への紹介状もらった」
念の為なのか、怪しいからなのか、すぐ近くの医療センターに再度出向く。
「夕方にまで連絡がなかったら陰性。陽性の場合のみ、電話してくるってさ」
5時40分。かかってこない。
母のところに経過報告と、大丈夫みたいと言いに行く。
お互い、昨日のことは「なにかありましたっけ」と触れず、表面上はいつもと変わらない。
「これでもしシロだったら、旦那氏の方は明日から出社できるから少し楽になるわ」
クロであった。
陽性。東京では陽性者が1万人を超えたと言う。そのうちの一人がここにいる。
庭から回って様子を見に来た母にバッテンのサインを送る。
バッテンだって言うのに近寄ってきた。
「私も今日は体操休もうかしら」
「休めば。なんか気持ちが沈むもんね」
食べ物もネットスーパで庭に置いていってもらうから心配しないで。こっちは大丈夫だから。
コロナ感染者が家族にでたことは面倒だなとも思うけれど、自然な形で確実に母から10日間、物質的に距離を置けるとどこかホッとしている。
こうなってみると、つくづく昨晩のうちに謝りに行っておいてよかった。