ご近所さん

買い物から帰ってきたら机の上に大きなビニール袋が置いてあった。

私の帰宅の気配を感じた夫が階段を降りてくる。

「それ、お隣さんが、なんだかいろいろもらってばっかりでっていって持ってきた。親戚の農家から送ってきたんだって。」

ああ、いつも夏になるとくださるんだ。袋のなかにはピカピカ光ったトマト、ピンとしたナス、ビーマン、そしてとうもろこし。

「なんだかもらい過ぎてるって恐縮してたよ」

私も友人から届いた食べきれないほどのお菓子やお歳暮にもらった長芋なんかをよく届ける。1メートルもある長い立派な長芋が、おが屑に埋もれ何本も箱に入れられやってくる。毎年暮れになると届くのだが、長芋が大好物だというご近所さんは恒例のお楽しみとして待っていてくださる。

そしてあちらがこうして野菜を持ってきてくれるのだ。もう、何年も続く。

お互い、「いやあ。わるいわあ。いっつももらってばかりで」「いえいえいえ。こちらこそいつもいただいて」と言いながらも、「お、来ましたね」と心の中では了解しているやりとりなのだ。

「なんかもらってばかりでってすごく恐縮してたから、もうあんまりもっていかないほうがいいよ」

夫が真面目に私を諭す。

「お礼とかもってかないほうがいいよ」

「わかっとるわかっとる。すべてわかっとるがな」

「なにかもらっても、もっていったらダメだよ」

「わかっとるわかっとる。すべて、わかっとる」

恐縮して見えたのはきっと、夫が出たからだ。

さっそくとうもろこしを電子レンジで加熱する。

ぷりぷりトマトと、一緒に美味しくいただいた。