それは、肉です

「昨日の豚肉、どうだった?」

今朝、朝食後、新聞を読んでいる夫に尋ねた。

テレワークでも出社しても男性チームの平日の夕食は10時近くになる。私は待たずに先に食べ、彼らの顔を見たら、寝る。

なのでお盆に乗せられた皿を各自、温めることになる。

昨夜はヘルシオで揚げないトンカツなるものに挑戦した。できたてはパン粉もカリッとし、付け合わせのジャガイモはほっくりと美味しそうなものだったが、はたしてヘルシオくんが計測して「これが完璧」と熱を通した食材に、数時間後、さらに温めたら肉が硬くなるのではないだろうかと気になっていた。

ま、そのときはそのときだ。まずは一か八かで出しておいたのだが、それがどうだったか調査するべく、聞いたのだった。

ところが

「豚肉?」

怪訝そうに言う。

「豚肉、あったでしょ。トンカツみたいの、つけておいたでしょ」

「トンカツ・・ああ、魚のフライのこと?おいしかったよ」

「魚?」

「うん、白身の魚の。フライはそれしかない、僕のは」

自分は魚だったが、息子には豚肉だったのかと思ったようだが、違う。二人とも、肉だ。

二人が同じ時間帯に食事をすることになる可能性も考慮し、夫がひがまないよう、できるだけ同じものを並べているのだ。

「まあいいわ。それで固くなかった?」

「え、うん、魚みたいだったよ。おいしかったけど。魚みたいだった」

信じてない。自分だけ魚を食べさせられたと思っている。

「固くなかったのならいいわ。豚です。あれは」

チキンカツを魚のフライと勘違いするのならまだ理解できるが。なぜ。

それほどふっくら柔らかく仕上がっていたということか。

遅れて起きてきた息子にも聞いた。

「昨日、豚肉、固くなかった?」

「うん、おいしかった」

夫の発言を二人で検証する。

「たしかに柔らかかったけど、決して魚ではなかった。どう食っても肉だった」

「フライになったらなんでも同じなのかしら。」

鯵を出すと、これ鯖?と嬉しそうに尋ねる夫。それにもびっくりしていたが、ついに肉まで。

鶏ささみのフライとカジキマグロのフライ。

きっと彼にはどっちがどっちか区別がつかない。