シーツの問題

急に暑くなった。

今日は二階の部屋に新しいエアコンを取り付けにきてくれる日で、朝8時の予定が7時50分にインターホンが鳴った。

きっと大慌てで在庫がなくなる前にと買った家が多いのだろう。少しでも早く始めて多くの家を回らなくてはとスタートを急いだにちがいない。

息子の部屋のエアコンを取り付ける位置はちょうどベッドの真上になっている。

昨夜、「明日、早いよ、8時だって」と伝えると露骨に迷惑そうな顔を一瞬したので「あ、嫌ならキャンセルしますが」と付け加えた。

「わかったわかった。おれ、ベッド動かさないと。それから本棚どうしよう」

と言う。ベッドはさておき、なんで本棚。

「だってどんな本を読んでるかとか見られたら恥ずかしいもん」

ばかばかしい。

「業者さんだって忙しいんだよ、さっさと済ませて次って感じで急いんでんだから見やしないよ。だいたい野郎の部屋の本棚なんて興味すらない」

失礼な。俺のコレクションを。ブツブツ言いながらそれでもしっかり私達夫婦の寝室にあるパーテンションを担いで持っていき、自分の本棚と机周りをしっかり覆っていた。

「ベッドは移動しないで上に乗って貰えばいいじゃない。ちょうといいからシーツを剥がして布団も干せば。汚れないし」

おお、賢いと納得して寝た。

今朝、ジムに行くこともあり、息子はいつもより30分早く起きる。

布団を干し、シーツを剥がす。枕カバーも外す。

「はい、お願い」

洗濯機のところに持ってきて澄ました顔で差し出した。

「・・・いいけど。乾いたらちゃんと自分でシーツとカバー、かけてよ」

「おう」

「上だけひっかけてピッて乗せるだけじゃだめだよ。枕も。ちゃんと入れてよ」

クイックシーツで簡単なのに、四隅をひっかける一手間を面倒くさがりマットの頭の方二箇所だけひっかける。枕カバーも枕にふんわり乗せるだけ。しっかり固定しないものだから、翌日にはもう、シーツはよじれ、枕カバーはどこかに消える。

「おれの布団だ。なにがおころうと問題はない」

お。

「俺の布団ならお帰りになってからどうぞご自分で洗ってください。あと、どうしようと構わないけど、シーツも枕カバーも汗取りの意味もあるからね、直にマットレスや枕に寝汗や頭皮の脂が触れると、汗の匂いが染み付いてとれなくて臭くなるよ。ま、俺の寝床が臭くて、でも洗えなくて、汗の匂いで虫も寄ってきても・・・」

「やめろっ、想像するだろ、虫とか言うのやめろっ。臭くなるとか、やめろっ」

ふん。勝った。