月曜の朝、四時に目が覚める。
あいかわらず薬のおかげで夜中、二度三度目が覚めトイレに行くが、それを除くと久しぶりの熟睡だった。
「昨日の夜さ、おやじのイビキめっちゃうるさかったよな。酔っ払って帰ってきたからうるせぇうるせぇ、イヤホンしててもうるさかった」
起きてきた息子に
「そうよ、私がときどき一睡もできなかったってゲンナリしてるのわかるでしょう、私はアレと同じ部屋にいるんだから」
調子よく答えるが実は昨夜はそれすらも気づかなかった。それほど深くねむっていたのだろう。
「おっはようございまーすっ」
母のところにヤクルトを届ける。ついでに夫が私のご機嫌取りに買ってきた舟和の芋羊羹を仏壇に供える。
夫が体調不良復活したとたんの飲み会で帰宅が遅くなったからゴマスリで買ってきたんだと言うと
「あらぁ。褒めてあげなさい、そういうのは」
と大真面目に言う。
「ありがとう、私こう言うの好きよ。いっぺんにドーンと大量に買ってくるより、こういうふうにチョコチョコ少なめのが回数多くいのがいいって言ったわ」
「そんな言い方・・・ちゃんと、ありがとう、嬉しいわっていいなさい」
「そんなふうに言ったら、もしやまだ機嫌が悪いのかって逆に怯えるわよ」
夫は私が丁寧な奥様っぽい口調で話し出すとピッとする。
妻を本当に怒らせると「・・・わかりました」と低く落ち着いた声で呟き、しばらく嫌味なほど丁寧でよそよそしく話すからだ。
「トンさんに怒られると安心する」
小学生の時に母親と別れて成長した夫は、私にお母さんぽさを求めているのか、静かに冷静に対処されるともう、どうしていいのかわからなくなる。もう、なにやってんのよと叱られると「はーい」と笑う。
「なんだかあなた、元気ね」
お小言も受け流す私を母と姉が訝しがる。
「昨日、酒、飲んだからな」
夫が飲んでくるならこっちもやろうぜと息子と二人、残っているワインで乾杯した。
だが情けないことに二人とも量は飲めないので、わたしはきっちり100ml、息子もグラス一杯であとはノンアルコール飲料だったが、そこは言わなかった。
悪ぶって「飲んでやったぜ」とやってみせると
「まあ、なんてこと、ほどほどにしなさいよ、あなた、体が普通じゃないんだから、なんでもかんでもお姉さんと同じになんて・・・」
とはじまった。
「だいじょーぶでーす」
長くなりそうなのを遮って部屋を退出、廊下を通って家に向かう。
ワインを飲むと私は元気になる。
飲まねば。定期的に。