20年ものの二階のエアコン2台が全く使い物にならない。
設定温度を18度にしてやっとどうにか耐えられるといった具合で、無駄に電力を使って室外機から生暖かい空気を出している。
寝室は南向きなので来年は新しいのを買おうといいがなら猛暑を過ごしたのだった。
しかしここにきて半導体不足や、海外の工場閉鎖などでその材料や製造自体が危うい、今年度のものは値上がり覚悟、ひょっとしたら手に入れることも難しくなるなどど報道され始める。
落ち着かなくなった私は新製品を好む夫に、昨年度製のものでいいから早いとこ手を打ってくれと頼んだ。二週間前のことだ。
約束では今日、隣町のエアコン専門店に行ってくれることになっていたが、何しろ数日間食欲がなくぐったりしていたので、再度、念を押すのもなあと黙っていた。
食欲は戻ってきたようだが、まだ疲労は残っているのかもしれない。しばらくは静養させたい。
いつもなら纏めておいたゴミを出すのは彼の担当だが、それも自分でやり、食べた食器は各自、自分で洗うという決まりも「いいよいいよ」と免除していた。
もう4、5日様子を見て、大丈夫そうなら通常運転かなと思っていた今朝、夫が言う。
「明日、午後から兄貴と食事してくる」
ああそう。・・・ん?
「もしかして飲んでくるの?」
え、ああまあちょっとだけ、そんなに酔うほど飲まないよ。
目が宙を泳ぐ。
「てっめぇ。あれだけ具合悪いって大騒ぎしておきながらちょっと良くなったらその週末、飲んでくるだと?」
もう元気だもん、トンさんのおかげですっかり元気。本当に助かった。
今朝だってこれくらいの量なら食べられるか、まだ肉類は早いかとめんどくさいのにあれこれ考えたと言うのに、なんですと?飲んでくるですと?
「エアコンは?」
「あ、今日、行きます、行ってくる。それで帰りに床屋寄ってきていい?」
「つまりこう言うとこだな。この世の終わりのように重病人ぶって大騒ぎをしたけど、すっかり良くなったから今日は床屋、明日は飲みに行ってくると・・・妻になんの労いもせずに」
「この埋め合わせはきっと、近いうちに」
これを人は空手形と言う。
ふーん、ふーん、ふーん。
ええ御身分じゃのう。
看護、修了。
いじめながら、安心していじめても大丈夫になったことに感謝する鬼嫁であった。