ある晴れた朝

今日は出社日の息子。肩をがっくり落としながらでていった。

昨夜、ひさしぶりに私と同じ時間に夕食を食べていた時

「はぁ。。こんなんじゃやってらんねえよ、どうしよう、どうなるんだこれから」

とぼやくので

「なるようになるさ。そのうち同じ状況でも免疫ができて打たれ強くなってくるよ。うまいこと受け流せるようになるもんだよ」

と返した。

すると

「あ、それは無理。絶対ありえない、第一そうなりたいとも思わない。はあ。。。この会社でやってけるのかよ、どうしよう・・」

いかにも被害者ぶって答える。その頑なな様子と絶望感になぜか腹がたった。

そうやって学生の時、転科をしたんだった。あの時は力づくで道を切り開く姿勢を逞しいと尊敬したが、ひょっとしてこいつ、ここでもそんなこと考えとんのか。

しかし同時に思う。それを正しくないとどうして言えよう。第一、私の生きる道ではない。

1年間耐えに耐え、やっと上司や先輩に訴えた。そこまではいいが、その先の大きな揺り返しの波が怖いのだ。だから逃げたいのだ。被害者です、僕は悪くないですと。

戦えよ。自分も少しは泥臭いことやってみろよ。

「まあ、この先あなたがどんな判断をしてどういう道を選んで進もうと、どんな履歴になろうと、父さんも母さんも、それでいいと応援するよ。君の人生だからね。私のじゃないもん、私が死んだ後も続く、君だけの人生なんだから、誰の視線も評価もまったく気にすることなく進みなさい。」

腹をくくった本心を言った。

甘ったれるんじゃない。

ピリっと突き放されたのを感じたのか、息子は黙った。

長い沈黙のあと、

「あ、テレビ、好きなのみていいよ」

と言った。

「ありがと」

カチャカチャとリモコンをいじって

「私特に観たいのないわ。どうぞ」

息子の前にぐいっと置いた。

あ、ありがと。ボソッと言ったか言わないかの声でリモコンを手に取った。

会社の話はもうでなかった。

 

今朝。

厚切りトーストにバターと蜂蜜をどっぷり塗って、クリームスープと甘いヨーグルトをたいらげた。

「今日は服装に困るね」

普段そんなこと言わないのに、会話の糸口を探すかのように。

「そうね。昼は26度だってよ、でも帰る頃はまた気温もさがるから、半袖にトレンチとかがいいんじゃないの」

「それは変だろう。トレンチは。さすがにトレンチはいくらなんでも」

ニヤニヤ笑いながら「トレンチはないだろう、トレンチは」と何度も繰り返し機嫌の良い自分を演出してみせた。

「じゃ、行ってきますんで」

はいはいと玄関に見送りに出た。

扉を開けて庭を横切っていくその姿をみているとあの歌が脳内でリフレインする。

どなどなどーな、どーなー。

荷馬車ははーしーるー。

頑張れ2年目!