カキフライ

先週、新聞ラックの整理をしていたら銀行の抽選で当たったカタログギフトが出てきた。

ゆっくり吟味して何にするか決めようとここにしまったのをすっかり忘れていた。

焦って期限を確認すると4月末日。

あぶないあぶない。急いで商品を選び、注文した。

迷わず冷凍カキフライにした。

鯵やササミや豚肉と違って、汚れを落とすために優しく洗ったり、やわやわの実にパン粉を塗す作業はうまくできなさそう。

はずかしながら私のカキフライはいつも生協の冷凍。

息子も夫も好物なのに、牡蠣だけは自分でフライにしたことがない。

そして奴らはそれを知らない。

10個入りのものが3つあるらしいから届いたら母のところにもわけてあげよう。

隣も二人揃ってカキフライ、エビフライは好物なのだ。

 

それが本日届くと昨夜宅配業者からラインがきた。

朝起きて、朝ドラ前に肉じゃがをしかける。ついでに残り物の厚揚げで、なんちゃって揚げ出し豆腐とだいこんと油揚げと人参の味噌汁の味噌を入れる前までのを作った。

あとはカキフライが届くのを待つのみ。

夕方、揚げれば今晩はそれで完成。

きた!

飛び出て受け取る。箱を開けるとちゃんと三つの袋が入っていた。

庭で水を撒いていた母に声をかける。

「はい、これ。カキフライ。冷凍だけど。三陸産のだよ。お姉さんに揚げてあげて」

この春移動が出て本社勤務にもどることになった姉は送別会が続き、今晩家で食べるのかも定かでない。

「揚げてもっていってもいいけど、お姉さん、予定わからないでしょ」

「あら、どうしたの、カキフライ、お姉さんこれ好きなのよ」

しっとります。

「そうそうお姉さんね、今の職場の人達が泣くんだって。別れたくなくて。昨日はお礼状もらってきた。あの人、人望あるからね。今度は本社営業だから大変よ。忙しく・・・・」

人間関係で悩んでいた娘が希望の部署に栄転が決まった嬉しさと安堵感から、この頃の母はややハイテンションだ。顔をあわせると姉の自慢話を延々聞かされる。苦痛だ。

できの悪い妹のひがみだろう。

嫌なやつ。そうかそうかよかったねと、ただ聞いてやればいいものを。

「あ、じゃあ冷凍庫、いれとこっか」

長くなりそうな話を遮り、窓を閉めひっこんだ。

ちょっと前なら彼女の気のすむまでつきあった。

今はちょっと違う。

 

お父さん、お母さんの話に付き合うのやめてごめん。

神様、未熟ものです。

でも。

めんどくせっと逃げるようになった今の私のほうが、なぜか以前の自分より信用おける気がして好きだ。