息子の会社でこの春、グループ系列の会社同士が合併するそうだ。
同じグループ内でのことなので、会社の経営状態がどうのこうのという心配はない。
この改革により息子の給料がさがることが昨日、発表された。
低い方の給料体系にあわせることになったのだ。
「もうやんなっちゃうよ。おれの人生どうなるんだよ」
しょぼんと萎れている。相当の打撃のようだ。
が、俺の人生を憂うほどのことではない。
確かに手取り5万マイナスのダメージは大きい。ショックだろう。
モチベーションが下がるのもなんとなくわかるが、私は思う。
大勢に問題はない。
「大丈夫、君の人生はやっぱり大丈夫」
なにを話しても上の空。
「落ち込んでるんだね。いきなり減額されたらねぇ。でもごめん、やっぱり私、なんの心配も湧いてこない。そもそも私にとっては息子がいるってことがもう奇跡だから。その子が立派に社会人になって職場で必要とされるようになるなんて。もう奇跡だから何を聞いたところでありがたい。息子の存在すべてがありがたいんだもん」
「そんなさあ、今、生きてるだけでなんて言われてもそんな気になれない」
そうだろうね。直後ってそうだよね。
でもガーンって撃たれたその衝撃がグワングワングワングワン。。。。ってだんだん弱くなって薄れてくる。その時もう一度、見つめてごらんよ。
家がある。家族がいる。歩ける、飛べる、走れる、食べられる。
そのうえ、うちで働いてくれと言ってくれる企業がある。真面目に働けば生活できるお給料ももらえる。
そのことの凄さが、どんなに凄いことか。気がつくよ。
そしてやっぱり母さんは、こんなことを思いながらスーツを着て出社する君を送り出している自分を奇跡だと思うよ。
私の人生に生まれてきてくれてありがとう。
一晩ではまだ消化しきれない彼は、今朝はまだ弱々しい。
大丈夫なんだよ。気がついて。
プランターに去年取り出し損なって埋もれていたらしく、突如生まれてきたチューリップ。
こんなに小さいのにいっちょまえにもう蕾をつけている。
奇跡。
がんばれがんばれ。がんばってまっすぐ伸びろ。