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決まってないならとりあえず花買ってくるねと夫が出ていった。

駅のそばのスーパーマーケットの中にある花屋に行ってくるねと聞いた瞬間、あ、あそこは・・と思う。あそこのおばさん、アレンジメントとかできないんだよ、どうせなら、あっちのスーパーのお花屋さんのほうが・・いやいや、お気持ちだ。せっかくその気になってくれているのに指図をするのは気を削ぐ。ここは意欲を育てよう。

偉そうにそう判断し黙って送り出す。

近くのスーパーにいったのになかなか帰ってこない。

やっぱりあちこちお花屋さんまわってるのかな。

言わずとも念じて通じたか。。

小一時間ほどして帰ってきた。

「はい、トンさん、1日はやいけどおめでとう。それから、これ、買っちゃった」

近所のケーキ屋さんの大きな箱も抱えている。

「え、だって私食べられない・・」

胆嚢も弱いので油ものは控えるように言われている。しかしそんなの、今日は特別とできない摂食食害のやっかいなところ。悲しくなる。

「あ、そうだ、ごめん、なにもかんがえてなかった、えーん、トンさんごめん。父さんなにも考えてなかった」

「いい、気持ちはわかるよ。張り切ってくれたんだよね。喜ぶぞっておもって。盛り上げようってしてくれたんだよね。」

「そうなの」

「息子がケーキあるって知ったら喜ぶよ」

ここでわーいとはしゃげない自分が悲しい。

こんなに落ち込むんだったらとっとと卒業したらどうなんだ、私よ。

腫れ物にさわるように和菓子を探し求めたりしないところが夫のいいところだと思う。

彼のこのアクションも私のなにかを刺激した。

これまではそれが苦しく悲しくやりきれなかったが、昨夜は不思議と夫が愛おしかった。

小学生の子供がお母さんを喜ばそうと思って精一杯、何か買ってきた。

アレンジメントじゃない花束も自然で素朴で夫らしい。

ワインで乾杯。

食後夫と息子が嬉しそうにケーキを頬張る。

息子は二つ食べた。

「トンさん、おめでとう。これ、おいしかった。自分で買ってきてなんだけど」

ほっぺを光らせる。

幸せな夜でした。