欲しいもの

もう10数年、誕生日も結婚記念日もクリスマスもプレゼントをもらってないと、何度も嫌味を言ったら今年は何か買ってあげるからこれからどこか行こうとういう。

自分で言っておきながら困った。

じゃあこれ買ってと思いつかない。

決して物欲がないわけではない。

おしゃれな服を着てみたい気もするが、私の日常、いつどこに着ていくんだ。

宝飾品も興味がない。

お風呂で使えるタブレットが欲しいと考えた。

ネットで調べたら二万円ほどで防水防塵のものが見つかった。これにしようかな。

しかしよくよく考えたら近頃の私は長湯ができない。

息子を産む前は2時間はざらだった。文庫本を持ち込み、ときには中で手帳にいろいろ書いたり、ダラダラ汗をかきながら過ごした。

あのエネルギーはどこいったのか、子育てでそんな時間もなくなり、最近になり、そうだ、またあれやってみようとイソイソ本を選び入ってみたが、数ページを読んだだけで頭がくらくらしてきた。

そんな状態でお風呂で動画三昧もできるわけがない。

 

自分の部屋が欲しい。

パタンとドアを閉めれば自分だけの世界。結婚するまえも姉と同部屋だったので個室というものに憧れる。

しかしこの場合、じゃあ個室を・・と言うわけにもいかない。

納戸の荷物を貸し倉庫に全部預けてエアコン設置して私の部屋にして欲しい。

そのための労力と資金とブーイングを考えると。

あったらいいなあと思うものはたくさんあるのに、さあ何がいいと突きつけられると適切なものが浮かばない。

文章教室に通いたいなあ。

映画を観に行きたいなあ。

ホテルのロビーでお茶したいなあ。

どこかの温泉でまったりしたいなあ。

うっとり想像して今は満足。第一それだけの体力がない。

今すぐなんでも手に入るなら、ぶれない強い心と、疲れない体。結局はこれに尽きるのだ。

「あのさあ、自分で言っておきながら悪いんだけど、考えておくから今日は神保町にドライブしない?」

三省堂本店が今年の春で取り壊される。

中学から住んでいた街。ほぼ故郷のような所が消えてしまうその前に行っておきたい。

行きの車の助手席で、買ってもらうなら疲れない靴かなぁ。。とぼんやり考える。

満ち足りている自分に気がつき、こっそり神様が与えてださっている今に感謝する。