接種三回目

先週の今日の今頃、ドキドキしながら精神クリニックの待合室にいた。

この一週間は大きな転換期だった。

きゅっと緊張して張り詰めて、そこから一気に解放。

こんな展開になっているとは言葉通り、想像できなかった。

 

さて。

三回目のワクチン接種をしてきた。

わたしの住む目黒区は比較的スピードが速いらしい。

昨年の9月に受けたわたしにももう順番がまわってきた。

実のところ二度目のとき、そのあと一ヶ月しんどくて参った。それが嫌で今回はどうしようかなあと考えてたが、万が一の時、持病のあるわたしは重症化しやすいだろうと受けることにした。

偶然夫が同じ日に会社で受けてくると知る。

「なら私キャンセルしようかなぁ。。あなた、いつも大げさにするから、自分がしんどいときにそばで重病人っぽくされるとやだもんな」

乗り気でなかった妻がここでキャンセルすれば次いつになるかわからない。

「しないから。今回はふつうにしてるから。トンさん受けなさい、約束するから、父さん絶対大げさにしないから」

なにしろ歯医者で歯垢をとってもらってきただけでも「ちょっと横になってくる」と寝込む男だ。二回目のときだって発熱すらしないのに帰ってきてからそれは大騒ぎだった。

「大げさにしないからって言うってことは、やっぱり大げさにしてたんだ」

あれ。って顔をしてニマッとわらう。

なんだよ。痛みや病院に極端に動揺するタイプかと雑に扱うのをえ遠慮してやっていたのに。

水曜日。それぞれの場所で私は2時40分、夫は2時に接種。

その日はお酒を飲んだ時のように頭がぼんやり思考がまとまらない程度で熱は出なかった。

その晩夫が帰宅。

「どうだった?」

「うん、大丈夫、ちょっとだるいけどね」

すかさずそばにいた息子が

「おい、やめろ。かまってちゃんになるな。母さんも一緒なんだからな」

 

翌日の昨日。

きた。倦怠感、頭痛、発熱。思考低下。

マニュアル通りに反応したのが人並みっぽくて少し、喜ぶ。

「トンさんおはよう」

「おはよう。だるいよね。わたしもだるい。そしてすでに発熱、寒気、頭痛。悪いがいっぱいいっぱいなので今日は悲劇の主人公演らないでよ」

夫は腕が痛いと言うが、熱もなくよく食べ機嫌がいい。

「トンさん、お昼食べていい?何食べよ、ぼく」

「・・・冷蔵庫に昨日のカレーがあるから」

「おにぎりとかない?」

「・・・・握れば・・」

「ひーん、できない。」

「・・ふりかけあるから。白いご飯がいいならそれで食べたら」

「えっと。おにぎり、ないかね」

やりとりが面倒で重い頭で立ち上がり、炊飯器をあける。握る。

そこに息子が降りてきた。

「おい、なにやってんだよテメー、自分でやれよ。いっとくけどな、お互い様なんだからな、母さんは手術や麻酔や危篤やらいろいろやったから痛みに鈍くなっているだけなんだぞ。自分がダメージ受けてるのがわかってないだけなんだぞ」

・・その表現はどうかなあ。

「あ、でも父さんも、なんかそういえばちょっとしんどい」

嘘言うんじゃないっ!

嘘つくなっ!

二人に同時につっこまれ、誰にも労わってもらえず気の毒な夫であった。

 

接種翌々日の今日。

奴は鼻歌。

私は熱の後の気だるさでやっぱり思考がまとまらない。

「でも母さんがぼんやりなのはいつものことだから」

息子よ。その表現もどうかなあ。