夜中、というか明け方、いつものように目が覚め、台所で朝の支度と洗濯をセットする。
小さなオレンジの灯りの下でコソコソ朝食の用意をしながらラジオを聴く。
いつしかこの時間が私の生活の中の小さな楽しみになりつつある。
今朝のラジオは中島みゆき特集だった。
彼女が提供した楽曲をセルフカバーしたものばかりを流す。合間合間にアナウンサーがその曲にまつわるエピソードを語る。
他の歌手が謳ってヒットした曲だからどの曲も聞き覚えのあるものだ。しかし彼女自身の声で聴くものはどれも新鮮で失礼ながら
「これってこんなにいい歌だったんだ」
と聞き入ってしまう。
うっかり泣きそうになる。
中島みゆきを知っているつもりで知らなかった。
もっともっと掘れば出てくるに違いない。でもどこから掘り返せばいいんだ。
まるでビートルズのようだ。サザンのようだ。
心が震える曲がたくさん埋蔵されているアルバムの山。
一体どれから手をつければいいのだ。
同じ時代をかすって生きていることの奇跡と幸運。
父がよく聞いていたルイアームストロング、ビングクロスビー、ナットキングコール。
父を追いかけたくてむやみやたらと聞いたが、きっとほんの上澄のところをかじっているだけなんだ。
当たり前にそばにありすぎて「ああいい曲多いよね、わりと好きよ」としてきた現代のアーティスト。まだまだたくさんいるのだろう。
今更だけど中島みゆきをしっとり味わいたくなった。
明け方の台所で聞いた「泣いてもいいんだよ」はなぜか沁みた。
別に泣きたいことなんかないのに。
泣いちゃおうかと、一瞬そんな気になった。