息子は今日、課長さんに話すそうだ。新入社員、相当緊張している。
「すべて、大丈夫。なんの問題もない」
昨日から呪文のように何度も呟いていた。
「大丈夫。自分じゃ気がついてないかもしれないけど、あなた、ずっと強くなってる。前だったらこんなふうに自分の抱えてること話さなかったでしょ。助けてほしいって第三者に働きかけることもしなかった。じっと堪えてるだけだったじゃない」
きっと自分に自信がついて気持ちも解放されてきたのだろう。
「大丈夫、全てはいい方向に向かっている。今、その途中だから。そんな予感がする」
不思議と強くそう思う。
私はといえば、明日、同じ病院内のメンタルケア科に受診する。
昨年最後の健診の際、主治医に年末の母や夫に全て打ち明けたことを話した。
すると、外部の精神病院での治療ではなく、同じ院内のにしたらどうかと勧められた。
外の医院で本格的なプログラムに取り組むよりもこちらの方が現状の私にはいいだろうとの判断だと思う。
その意図はよくわからないが、そうすることにした。
退院したばかりの頃、数年ここに通った。当時は精神科と呼んでいた。
「なんかね、うちの病院もいろいろ考えたようで、メンタルケア科ってなったんですよ」
やはり名称からくるイメージで受診を躊躇う人がいるのだろうか。
私も始めはそうだったが、今となっては楽にしてくれるならどこでもなんでもいい。
メンタルも精神もどっちだっていい。
生きづらさからだいぶ解放されてきた。
あともう少し。最後の何かが、どうしても消えずに苦しい。
こんがらがった何かを誰かの力を借りて解いてゆきたい。
なにから話せばいいのか。どう話せば伝わるのか。
「そんなこと考えてるんだ」
夫につぶやいた。
「そのまんまでいいんだよ、言わなくったっていいよ。あちらが話しやすいようにいろいろ投げかけてくれるから。それに返事をすればいいよ。相手はプロなんだから。一回目で全部話そうなんて思わなくていいんだよ。これから何回も会って話せば」
この人は大人なんだか子供なんだか。こういう場面ではときどきいいこと言う。
息子に言ったように私自身も、なんとなくいい流れに乗っているような気がしている。
不安だが楽しみだ。
明日、きっと疲れる。そしてきっといい日になる。