回転の鈍い頭

小松菜が50円と安かったので油揚げの煮浸しを作った。

味醂と醤油と出汁を吸った油揚げがふっくら煮えて満足していたところに母がやってきた。

「これ」

手に湯気のたつタッパーを持って差し出す。それはまさに、小松菜の煮浸し。

おそらく同じ店に行き50円のを見つけたのだ。

親子だ。小松菜が安いと買って作るのは油げの煮浸し。

「ごめん、ほら。私も今、作ったとこ。ありがとう、だからいいよ、それ、お母さんとこで食べて。ウチもほら、山ほどあるのよ」

「あら、私のは鳥の挽き肉もニンジンも入って美味しいのよ、食べなさい」

いや・・実は昔っからお母さんの作るのの、その脂っこいところが苦手で、自分好みのあっさりしたのが食べたくて作ったのだよ・・とは言えない。

こういう時は争わないに限る。

「ありがと、じゃ、もらって冷凍しておくよ」

戸棚からジップロックを取り出すと

「そんなビニールに入れたらダメになるわっ。冷凍するならあなたの方冷凍しなさいよっ」

声を荒げて憤慨した。

ま、そうか。せっかく持ってきて目の前で袋に入れられたんじゃ、がっかりするよな。

そりゃそうだ。

「そうね。じゃ、せっかくだからこっちを今晩食べるわ。ありがと」

夫と息子に出そう。

そうよ、そうしなさい、これはお肉もにんじんも入っているからおいしわよと、もう一度、具沢山をプッシュして帰っていった。

 

・・・まてよ・・私が持っていったものは「今日いらないから冷凍するわ」って目の前でやることもあるじゃねぇか・・。
と、気がついたのはそれから数時間経った夕食後、湯船につかった時だった。

この時間差でじゃないと反応しない己の鈍さにおかしくなった。

平和だ。