昨日、夫と午前中渋谷に映画を観に行った。
息子の会社が関わったものが上映されたというので私が誘った。
「会社が関わっただけで彼自自身はなんも絡んで無いけど・・行く?」
「いくっ」
時刻は9時45分。そこからバタバタと支度をし、10時55分には映画館に座っていた。
早速ポップコーンを頬張る夫。
のり塩フレーバを振り撒き、紙袋に出し入れする手がガサゴソあたる。うるさいなぁ。
全て食べ終え、やっと静かになった・・・と思ったらトロンと瞼が下がりだした。
おいっつ、まだ始まって30分も経っとらんぞ。
肘で突くとパッと見開く。しかし気づけばまたトローン。次見た時はもう寝ていた。
そうだった。この人は鑑賞物がドンパチピストル、もしくはカーチェイスでない場合、自動的に眠りにつくようできているのだった。
美術館に一緒に行ったときもそうだった。気がつくといない。探すと中央にあるソファでこっくりこっくりしていた。ディズニーランドの白雪姫も寝た。
放置し作品に戻る。右隣はその後も大きな効果音が流れるとパッと目覚め、しばらくするとまた眠るを繰り返し、ラスト、クライマックスの音響で盛り上がったところで身を乗り出していた。
上映が終わり、最後に会社のロゴが小さく映った。ちょっとジンとする。
場内が明るくなり皆が立ち上がり始めると彼は信じられないことを口にした。
「面白かったね」」
「うそだ、寝てたじゃんっ」
「寝てないよ、トンさんにつっつかれたあとはちゃんと起きてた」
「嘘だぁ、じゃあ、あの海でのシーン、主人公に何があったでしょうか」
「うーんあれはいい場面でした」
寝てた、起きてたを言い合い家の玄関の扉を開けると朝寝坊の息子がちょうど起きてきたところだった。
「御社の作品を観てまいりました」
あ、そうなの?どうだった?混んでた?関わっていないのになぜか照れる新人に感想を述べたのはまさかの居眠り男。
「すごくよかった。よかったよぉ」
このゆるっとしたおおらかさ、才能だ。身につけたい。