土曜の朝、息子は9時過ぎても起きてこない。
あれ。確か今日、映画を観に行くその前に眼科に寄るって言ってなかったっけ。
9時20分、予約しているなら間に合わない。
階段を上がり、ドア越しに声をかけた。
「もしもし。今日、眼科じゃなかったけ。」
「・・・あぁ・・行く・・」
今、起きたようだ。
「9時20分ですけども」
「あぁ・・わかった・・」
そのまま一階に降りてきたが息子の起きてくる気配はない。どうなってんだろ。
10時じゃなかったっけ。
10時に家を出る、だったっけ。
10時に目医者って言ってたと思うけどなあ。
それでも一人暮らしをしていると思えばと、そのまま放っておいたら10時になってやっと降りてきた。
「おはようモーニング」
ちっとも慌てていない。
「10時に眼医者じゃなかったっけ」
ニヤリと笑って息子が見下ろす。
「11時」
「あれ、10時って昨日言ってなかった?だからいいのかなぁって」
「変更。なんだよ、臨機応変っていうんだ、こういうのは。いいだろ別に」
違う違う違う。
「いいだろ、俺の予定なんだから。予定は未定じゃ」
「いや、あなたの心配をしてるんじゃない。私の記憶力の方が不安になって。それで確かめたんだって」
昨日の夜の会話の内容をちゃんと思い出せないのかと、脳の老化を心配したんだってば。