2021の衣替え

珍しく夫と息子がそろって出社したので、それっと衣替えをした。

大きな婚礼ダンスは息子の部屋にあるので平日は入れない。

彼が不在中でも夫が居れば、ドタバタドタバタ大きな物音を立て、万が一会議中だったりすれば迷惑になるからできない。

丸々一日、自分中心に使える。天気もいい。冷蔵庫にはナスとピーマンと豚挽肉の味噌炒めがあるから夕飯の支度もいらない。

今日やらないでいつやる。

作業に取り掛かる段になって、なんとなくスッキリしたい衝動に駆られた。

ここ数日のモヤモヤを不要なものと一緒に捨ててしまおう。

衣装ケースの脇にある、みかん箱くらいの「とりあえずとっとく箱」を開けてみた。

入れたことすら忘れていたものが、ぎっちり詰まっている。

息子の高校の教科書、ノート、計画表、学校のプリントまであった。そうそう大学生活が始まる前に机周りの大掃除をしたが、その時は捨てる度胸がなく、しばらく置いておこうということになったんだっけ。

結局あれから一度も使っていない。ノートたちよ、ありがとう。処分。

母のお下がりでもらった「いいものなのよ」というカーディガン、3シーズン着てその度に「やっぱりそれ、いい物に見えるわ」と満足そうに言われたけど、実は好きじゃない。

許せ、処分。

息子の小学生の時のサッカーユニフォーム、処分。

擦り切れて色も褪せているのにとってあったシーツ、座布団カバー、処分。

もうこの際、今、使っていない衣服は捨てよう。今、なんだから。私がいるのは。

過去も未来も頭の中にあるもので、存在しない。

実際の私がいるのは、今、この瞬間のここだけ。

勢いがついた手はどんどん動く。

母のところからやってきた服はどれも好きじゃなく、着て見せないと機嫌が悪くなるから着ていたことにも気がついた。

えいっ。処分。

ちくりと心が痛む。が、不思議な清々しさ。

ああ、私はまだ、どこかで母を恨んでいたのか。

父の形見を自分では捨てきれず、母が夫にとよこした上等な買え上着数着にコート。

これもな。。。

男物の背広は場所をとる。

夫は3着は喜んで使ってくれているが、それ以外は一度も袖を通していない。これもスッキリさせたいと、重たいハンガー取り出したが、躊躇う。

躊躇うってことは時期じゃないのだと元に戻した。

 

大きなゴミ袋一つ。その脇のリサイクル箱に移った服の山を見ると、自分が母を傷つけている後ろめたさが込み上げる。

でもなんなんだ。嬉しいぞ。ワクワクする。

自分の中にあった毒が溶けていく。

母もマル。私もマル。誰も悪くない。タイミングと相性がズレただけ。

そしてそれも、とっくの昔の話。

はいっ、もうおしまい。

 

冬物を入れ直し、ちょっとだけスッキリしたタンスの引き出しを改めて見る。

自分が着たいと思う服の方が多くなった。

まだ全部切り捨てることはできない。それが現状の私なんだろう。

でも、前進した。

へこたれながら、生きている。

へこたれながらも毎日は続くんだ。

息子をこの世に産みだす直前、お腹にむかって言ったっけ。

「途中、暗く狭いところを通るけど、怖くないよ、すぐ明るいところに出るからね。」

あれは産道通過を怖れるなという意味だったけど、今の私にそのまんま言ってやろう。

苦しいところを通過してるだけ。明るいところに行く途中だから大丈夫。

今はその途中にいるからしんどいだけだよ。

大きなゴミ袋に一つ、リサイクル用の箱が一つ。

それだけ空いたスペースのぶん、私の気持ちも広がった。