ありがてえ

「告白」は私には大事件だったのになにも変わらない穏やかな日々が続いている。

こんなに心地よい無反応ってあるだろうか。

今朝もいつものように洗面所から彼の「カー、ペッ!」が連発で聞こえてくる。

立場的に、感謝しているならこれっくらいのこと、もううるさく言うのはやめなくちゃと、謙虚な心が浮かぶ。

「カー、ペッ」はまだ続く。

「もう、やめてくれよぅ」

思わず叫ぶと「あ、ごめんごめんごめん」と止まった。

神経質だなぁ。

自分は相手に、もっと大きな重荷を背負わせておきながらこんなことすら我慢でないのか。

朝ごはんを食べ始めたところに梨を向いて出した。

「ありがとう。こうやって追加で剥いて置いてくれるの、嬉しい、愛情を感じる」

この人はフェアな人だ。

ありがてえ。

きっと私はこれからも、こんなふうに毎日を続けていけるんだろう。

不安を半分、持ってもらって心は強く、気持ちは軽くなった。

それなのにしれっと威張らせてもらいながら、二人は今日も暮らしていく。

そして私は今日もこっそり感謝する。