可愛くない妻

祝日の月曜日。敬老の日ということで勤労奉仕でお祝いすべく、母の家の庭の草むしりを夫とやった。

「2時間限定にしようね」

互いに体力に限りがあるのに、熱が入ると夢中になりすぎる癖があるのであらかじめ時間を区切った。

「うん。11時になったら終わりにしよう」

9時スタート。芝刈り機の音がするや否や母がシュッとカーテンを開ける。

「あらあら、申し訳ありませんねぇ。いいわよ、そこ、やるから、申し訳ないわ」

夫に愛想良く可愛らしい声でペコペコする。

「いや、だいじょうぶです、これっくらい」

ハハハハハッと爽やかに作業を続ける夫。

どっちもタヌキなんだからと、黙々と雑草を引っこ抜く私。

「なに、これが敬老の日のお祝いなの?」

今度は私に声をかけた。

「そう、すみませんねぇ、高価なプレゼントは買えなくて」

「あら、とんでもない、ありがたいわ」

適当でいいのよと中に引っ込んだ。

 

秋の風がときどきふわっと撫でていく。

それでも日差しが強くジリジリ暑い。

二人、話しもせずひたすら草をむしり、刈る。

途中、夫が家に戻り、氷水を私のマグカップに入れて持ってくる。

「ほら、飲みんしゃい」

「ん」

ありがとうといえば可愛いものを。黙って飲み干し、カップを渡すと、はいと受け取り部屋に持っていった。

それをその後2回、持ってきた。

2時間たっぷりやってスッキリした。

「お疲れ、先に戻ってるね」

庭を穿いているのをおいて、家に入った。

「汗びっしょりだからシャワー浴びといで」

風呂から出てきた夫に

「ほれ」

と差し出す。

「あ、ありがとうぅ」

彼は可愛らしく喜んだ。

大きなおにぎり二つ。

ありがとう、美味しい。トンさん、ありがとうねと頬張った。

お礼を言わなくちゃならんのはあんたじゃないの?トン。

二人で午前中の庭仕事、今日はいい日。