炊飯器2

「あ、届いたの?」

玄関でのやりとりを聞きつけた夫が2階から降りてきた。

「古いの、ちゃんと持ってった?」

「持っていってくださいました。ご親切なお方でございました」

キタキタキタキタと、真っ赤に光る新品をいそいそ台所に運ぶ。

「あれ、これ説明書は?保証書は?箱、持ってっちゃったの?」

「今日だって忘れてたから。急に言われて用意してなかったから入ってた箱に入れて持っていってもらったの。説明書とか、ちゃんと丁寧に抜いてくれたよ」

「あ、そ」

そんならいいのといった雑な対応に何故かムキになり、いかに彼が親切に面倒臭い箱出しと梱包を引き受けてくれたか、その人間性の素晴らしさを熱く語るが、全く響かない。

「炊いてい?もう今、炊いちゃっていい?」

・・・どうぞ。

その晩は夫の好物のカレーライスにした。

「これ、新しい炊飯器のだよ」

食卓についた息子に言うと

「フゥン、親父が勝手に家族に相談もせず、衝動買いしたあれか」

嫌味を言いながら口に運ぶ。

「・・・・うめえじゃねぇか」

「だろっだろっ、やっぱ違うよな、高級なの買ったんだから、最新のなんだから」

「得意になるんじゃねぇっ。威張っていいのはこれを開発した業者の人たちだ」

二人のやりとりをよそに、曰く付きになるはずだった新しい炊飯器にあったかエピソードがついてよかったなあとぼんやり思っていた。