通販番組にやられた男

昨日日曜の午後、夫がテレビを観ていた。

初めはニュースだったり、街角散策だったりと、くるくる番組を変えていたが、それが途中からビタリと止まった。

ジャーパネッ・・ジャパネッ・・夢のじゃぱ・・♪

休日の昼下がり、家でのんびり過ごす、お仕事お休みの皆様をターゲットに、大感謝祭を放っている。

この番組は私も好きだ。

次から次へと、便利で珍しい商品を、取り付け工事費無用とか、下取りサービスなどの付加価値をくっつけ魅力的に紹介する。

「ただいまお電話混み合っております」

というライブ感覚もいい。

社員がスタジオからいかにこの商品が優れものかと熱く語るその姿も、エネルギッシュで、観ているだけで元気になってくる。

「ご覧ください!ほうら、油を引かなくてもスルッスル!」

フライパンと鍋のセットだった。

「これ、いいね。トンさん、これいいよ。焦げつくって言ってたじゃん」

「あぁ。この前、ついに新しいの買ったんだ。・・・まだ下ろしてないけど」

あぁそう。画面にまた向きなおった。

番組はそれから高級炊飯器に進んだ。私は遠くでそれを聞きながら、午前中買ってきたばかりの本を読み始めた。

夫はそのままずっと見続けていた。

そろそろ夕飯の支度をするかと立ち上がると、彼もスッと立ち上がり二階に消えた。

選挙から息子が帰り、シャワーを浴び、食事の用意も整い二階に声を掛ける。

「ご飯ですよぉ」

・・・返事がない。

「お食事ですよぉ〜」

「あ、はいはいはいはいはい」

返事はあるが、降りてこない。

もしや。階段を上がろうとした頃、ようやく夫が降りてきた。

「炊飯器、買っちゃっいましたぁ」

・・・やはり。

それを聞いた息子が

「なんでだよ、いらないだろっ。まだ使えるだろっ」

「美味しいんだって。今なら下取りしたら5マンいくらするのが2マン5千円だって」

・・・ああ、それはあの会社のいつものパターンなんだよ。特別珍しいことじゃない。

「今だって不味くないだろっ。また無駄遣いして。なんでいつもそうやって勝手になんでもやるんだよ。いっつもそうだ、相談しろよっ家族にっ!母さん、なんとか言ってやれ」

そう言われても、目の前で嬉しそうにホッペを光らせ「土曜に届く」とはしゃいでいる。

おにぎりと納豆の大好きな夫、頑張って仕事し朝昼晩、家で食べる白ご飯、美味しいものを食べたかろう。

私の言いたいことのだいたいは息子がもう言ってくれた。

「はいはいはいはい。食べましょ」

しかし盲点だった。

夫の衝動買いは以前から要注意と思っていたが、通販番組も守備範囲であったか。

定年退職したら、ここは警戒しよう。

「オヤジ、そんなにうまいご飯なら、これから白飯だけでいいな」

「あら、そうなの?それはいい買い物だわ」

「ひーん」