暗黙の了解

ゴミ置き場が我が家の両脇になってからだいぶ経った。

母は相変わらず文句を言っているが、慣れてしまうと気にならない。

美観的に嫌だというのが彼女の言い分だが、ほぼ家の中にいるのだ。

ずっと外から家の中を眺めているわけでもない。

猫やカラスに荒らされてゴミが散らばっているのなら嫌だが、ゴミ箱に入れているからそんなこともないし、私にとってはなんの問題もない。

ただ、出したゴミ箱を取り込むのがめんどくさい程度だ。

しかし、母にとってはポリバケツを持っていくのもめんどくさいようで、いつからか前日の晩に門の内側にそっと置いておくようになった。

朝、ゴミを出そうと自分の家のバケツを持って出ようとすると、デンっとそこに実家のバケツが待ち構えている。

彼女の主張で色違いにしたモスグリーンのバケツが、よろしくねっと言わんばかりにそこにいる。

門の外に出すだけなので、二つのバケツをゴミ置き場に並べるのが私の役目だ。

このシステムが定着してからかれこれ二ヶ月経つが、互いにこのことについて話したことはない。

「水曜日、燃えないゴミの日、うち、少ないからあなたんちのバケツ、勝手に開けて一緒に入れちゃっていい?」

水曜の資源ごみの日、わざわざ大きなバケツに入れるほどでもない量だが、そういう決まりになっている。母はいちいちバケツを持ってくるのが面倒で、うちのに入れていいかというのだが、もうとっくにそうしている。

追加のゴミを入れにいったら見たことのないビニールが入っていたのでギョッとしたので気がついたのだった。

こんどからそうしてもいいかという前提に合わせ「どうぞ」と答えた。

門の前のポリバケツについてはやはり、互いに触れていない。

お茶目だぜ。母さん。