またやってしまった。スライサー使用中、勢い余って指を。
ポテトサラダに入れる玉ねぎをシュッシュッとやっていた。
あ、これ、直に玉ねぎ持ってちゃ危ないなと思ったその矢先、触れたと思ったら、やっていた。
半月ほど前、これを買ったばかりでキャベツの千切りが面白いようにサッサかサッサか山盛りに出来上がってくるのが面白く、調子に乗ってやっていたらスパッとやった。
この時はかなり深く、止まらぬ流血に「これは縫うレベルかも」と一瞬本気で焦ったが何とか持ち堪え、それでも完治まで二週間かかった。
数歩歩けばなんでも忘れる頭は、完治した途端、油断する。
今回は幸い傷は深くなかったが、新品の刃の切れ味は素晴らしい。
あっという間に血が滲んできたかと思うと、ポタポタと落ちた。
しかし。今の私は前回とは違うのだ。
狼狽えもしなければ、痛みで料理をやめることもしない。
そう。経験を積んでいる。シカゴファイヤーで。
あのドラマを見ていると登場人物たちが毎回必ず負傷する。生々しい傷を負いながらも果敢に任務を全うしようとする精神力。
私のように「今日はちょっとしんどいから休もう」などと甘っちょろいことは誰一人しない。
脱臼していようが、モルヒネを打つほどの痛みを抱えていようが、サイレンが鳴れば現場に飛ぶ。そして全力で市民の命を守るのだ。
「こんな傷、ケイシーに比べれば、ドーソンに比べれば、ハーマンに比べれば、なんてことないわっ」
淡々と、処置をするのみ。
タオルで圧迫止血し、前回負傷の時購入した、ガーゼと抗生物質クリーム、包帯を引き出しから出す。指は動く、薬を塗って覆えばいい。
そしてこれまた前回買ってきた炊事用の手袋をし、調理に戻った。
こんなことで大騒ぎしていたら51分署のみんなにはずかしいわっ。
彼らのおかげで私もタフになってきたなと自らの成長を感じ、一人得意になる。
しかしよくよく考えてみれば、ファイヤーマンたちが一番やってはいけないと互いに注意しあっていること、それは不注意なのだった。
作中何度も見かける「集中!」という掛け声。
ここを、学ばないと。
家事にも危険は常に潜んでいる。