息子が昼食後、「おやつ食う」と棚をゴソゴソやっていた。
ポリポリという音と醤油の香ばしい香りがしてきた。あ、小粒煎餅だな。
ふと振り返ると箸を手に持っている。
「さては」
「なんだよ」
「お主、お箸でお煎餅、食べとるな」
「そうだよ、なんだよ、文句あるか」
ない。ないけど個人的に好かん。ポテトチップやお煎餅くらい手の汚れを気にせず摘んで食べる感覚を好む。
いつからかそういう人達を「ハシラー」と呼ぶのだそうだ。
あの手についたしょっぱいのを、ぺろっと舐めるのがまたいいんじゃないか。
ちなみに息子、ポテトチップも、ポップコーンも、スナック類は全てそうする。さすがにサンドウィッチやトーストまではしないが、フライドポテトもそれをしようとしたので「二度と揚げない」と言ってやめてもらった。
別に悪いことしてないだろと、さっきまでラーメンを摘んでいた箸で豆粒ほどの煎餅を口に開きなおるので何か一撃を喰らわせたい。
「・・・ま、いいわ。Twitterで、我が家の新入社員、箸で煎餅を食っとる、と呟こ。ハッシュタグ、御社の商品名」
「おい、よせ、やめろ」
もちろん冗談である。しかし、うちの母親ならやりかねないと思ったのか、本気で怯える。
「おい、やめろ。やめるって言え。やらないって言え」
予想外の狼狽ぶりに母は遊ぶ。
「わかった。・・・じゃあ今日のところは絶対しない」
「今日だけじゃないっやめろ、やめるって言え」
「ん、わかった。じゃあ、今月はやらない」
ずっとダァ〜。やめろ。やらないって言え。ちゃんと言え。と騒げば騒ぐほど楽しい。
「うちの新入社員、水の使い方が荒い。もっとこまめに止めて欲しい。ハッシュタグ・・」
や〜め〜ろ〜。