親父を大事に

一昨日、野菜を薄く切るスライサーを使おうと、怪我防止のためのプラスチックのストッパーを外そうとしたら力余って、はずみに親指をスパッと切ってしまった。

つっ。

まずはじっと眺める。

血が出てこない、痛みもないからスレスレのところで済んだと思っていたら、数秒たってからじわじわ血液が溢れ出し、同時にジンジンと痛みがきた。

どうやら深くやってしまったようだった。

皮と肉の境目ギリギリのところだったので、縫うほどではない。しかし、出血はなかなか止まらない。

何度も何度もガーゼを取り替え、結局傷口が固まるまで丸二日かかってしまった。

ガーゼをして、テープで巻いても、力が当たるとすぐ赤く滲む。

仕方がないので怪我した指を持ち上げ家事をするのだが、やりにくい。

切った直後は人差し指じゃなくて良かったぁと思っていたが、親指というのは直接的な働きは少ないが、隠れたところで大きな支えを担っているのだった。

蓋を開ける時、水道の蛇口を捻るとき、実際に力を込めるのは手の平と人差し指から薬指くらいまでのスタメンなのだが、彼らが効率よく仕事をするその影では親指が支点となっている。

雑巾を絞るとき、コップを持つ時、そして、これもかぁとびっくりしたのが膝に手を置くとき。

親指が着地していないとなんとも心許ないのだ。

親指の役目は皆を落ち着かせること。

存分に力を発揮させること。

そういえば私は気持ちを安定させる時、親指をぎゅっと握る。

子供の時は親指をおしゃぶりする癖があった。

他の4本の指たちから一人、離れたところにいる彼。

私を大きく支えるて存在だったんだと発見した。

そして・・・夫をもっと大切にしようと、秘かに肝に命じる負傷なのだった。