朝の魚

この魚、食べないとダメ?

 

たまーに、ある、これ。息子。

なんで?

お腹あんまり空いてない

たいてい、こういうときは、積極的に食べたい気分ではないのであって、胃の状態とはあまり関係ない。もしここにカステラやどら焼きがあったらそれならぺろっといくのだ。

高校中学の反抗期真っ盛りの時期は、些細な揉め事は極力回避しようと見逃した。

いいよ、じゃ、ラップして冷蔵庫に入れといて、お昼に私たべるわ

しかし、甘ったれるな、青年。

のんびり起きてきて用意された食事を選り好みするなんて一万年早い。

食べないとダメ?

ダメだねぇ。

ダメ?これってとっとけないっけ。

とっとけないねぇ。そんな小さいの、お食べ

昼は昨夜のカレーのつもりだ。夜も作り置きの煮豚とピーマンとキャベツ、挽肉の炒め物をそろそろ使わないとと予定がある。半身のアジの干物くらい平らげろ。

これ、なんかいつもと違う?

同じだよ。まあ、お食べ。具合悪くなるっていうんじゃないならね。命だからね。アジの。好き嫌いで残されたんじゃ鯵も浮かばれないよ

そうきたか

あとはキミの人間性と成熟度に任せた

会話はそこで途切れた。

しばらくテレビの音だけが響く。

寝っ転がってタブレットを観ていた。

ごちそうさまでした

頭を持ち上げお盆を覗くと魚はきれいに無くなっていた。

よくできました。