夫婦円満

今日、夫は一体何時頃帰ってくるんだろう。

仕事を終えてからだろうから、10時11時だろうか。食事はどうするんだろう。道中どこかで食べてくるのか、それとも家で食べるつもりなのか。

今晩はいくらなんでも9時にさっさと寝てしまうわけにもいかないなあ。

・・・めんどくさい・・・けど、仕事して疲れて帰ってくるんだし、さすがに起きててやらないと。

ええい、もう、だいたい何時ごろなのよっ。

朝、7時40分、月曜以来していなかったラインをする。

「今日、帰ってくるんだよね。明日だったっけ。今夜もう一泊するんだったっけ。今日だとしたら何時になる?明日だとしたら午後かな。夕方かな。連絡してね。ラスト1日、頑張ってね」

短く、聞きたい内容を詰め込んだら質問だらけになってしまった。

送信。

すぐ返事が来た。

「おはよう。帰宅は明日です。ごめんな。」

あら。

そこに続けて届く。

「明日こっち出る時にまた連絡するけど、夕方になるかな。ごめんな。しっかりな」

クマが両手を合わせ、謝っているスタンプが付いている。

にま。笑みが浮かぶ。頬が上がり、目尻が下がる。

1日もうけ。もう1日、ダラダラし尽くすぞ。

そこに息子が起きてきた。

「父さん、明日だって、帰ってくるの」

「そうだよ、母さん、土曜って言ってたじゃん、初めから」

え、そうだっけ。

「さてはお主、待ち遠しいんだな、早く帰ってきて欲しいんだな」

「まっさかぁ。しめしめ、もう1日、儲かったって大喜び」

いやいやいや、と息子は笑い、首を振る。

「だってどう見たってこの文面、いつ帰る?今日?明日?何時?ってこれはどう見ても。オヤジもすっかりそう思い込んどる、ごめんなとか。いいのか?完全に自惚れてやがるぞ。」

ふふふ。

「いいのいいの。これを美しき誤解と呼ぶ」

そんなのどうでもいいもーん、ヤッタァ、1日もうけっ。

妻。浮かれる。